Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2021.04.07

プレスリリース

アニオン交換膜を利用した水電解による 高性能、高耐久、低コストの水素製造システム

水素社会の実現へ大きく前進

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の山口猛央教授と宮西将史特任助教およびKISTECの黒木秀記サブリーダーらの研究グループは、高性能、高耐久性、低コストの純水型水電解システムを実現する、新たなアニオン交換膜の開発に成功した。

出力変動が大きい自然エネルギーからの水素製造では、膜型水電解が主流になりつつある。しかし、H+イオンを伝導する膜では酸性環境になるため、大量の白金が必要だった。一方、OH−イオンを伝導するアニオン交換膜ではアルカリ性環境になるため、貴金属は必要ないが、アニオン交換膜が分解してしまう。研究グループはその分解機構を詳細に解析し、アルカリ中で分解しないアニオン交換膜を開発した。さらに、純水を使った水電解試験でも、高い変換効率での水素製造に成功した。この水電解システムは80℃で100時間を超える試験でも安定であり、低コスト、高性能、高耐久性をそなえた水素製造を実現する成果である。

本研究成果は、2021年2月22日(現地時間)に米国化学会誌「ACS Applied Energy Materials」に掲載され、掲載号のカバーピクチャに採用された。また、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「水素利用等先導研究開発事業」に関する研究成果である。