Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2021.03.22

プレスリリース

結晶構造の次元性変化を人為的に制御し電気抵抗が3桁変化するスイッチを実現

東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の片瀬貴義准教授、神谷利夫教授、元素戦略研究センターの細野秀雄栄誉教授らの研究グループは、2次元(2D)構造と3次元(3D)構造を人為的に制御することで、電気抵抗率が3桁スイッチする新材料を開発した。

材料の電子機能は結晶構造の次元性に強く依存する。そのため、結晶構造を人為的に制御できれば、大きな電子構造変化を伴う巨大な電気特性スイッチになると期待できる。しかし、強固で等方的な結合からなる無機結晶では、温度変化により構造の次元性まで大きく変化する例はこれまでなかった。

本研究では、高温固相反応法と急冷処理を組み合わせた薄膜合成法により、2D層状構造を持つセレン化スズと3D岩塩型構造を持つセレン化鉛の固溶体を作製し、自然材料では存在しない2D-3D構造の相境界を人工的に形成することに成功した。この固溶体では、温度を変えることによって3D構造から2D構造へ可逆的に転移し、バンドギャップのない金属からギャップが開いた半導体へ変化するために、電気抵抗率が3桁増加することを明らかにした。

本研究成果は、結晶構造や化学結合が異なる無機結晶の固溶体系で、結晶構造を人為的に制御することにより、電気特性が大きくスイッチする新機能材料開発につながると期待される。

研究成果は「Science Advances(サイエンス・アドバンシズ)」誌に3月19日付(現地、米国時間)で掲載された。