Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2021.03.17

プレスリリース

円偏光散乱を用いた新たながん診断技術を実証

円偏光スピンLEDによる生体内でのがん深達度検出に向けて

東京工業大学 科学技術創成研究院の西沢望助教はパレスチナ工科大学のB.Al-Qadi(バッサム・アル・カディ)博士、自治医科大学の口丸高弘博士との共同研究により、円偏光散乱を用いた新たながん診断技術を実験的に実証した。また、早期がんの深達度の検出が可能であることを明らかにした。

円偏光を生体組織に照射し、生体内からの散乱光の偏光状態を調べることにより、内部の散乱体である細胞核の形状変化を介して組織の異形成を検知することができる。本研究ではヒトのすい臓がんの肝転移検体に対し近赤外の円偏光を照射し、がん診断が可能であることを示した。

さらに、円偏光の散乱現象を数値シミュレーションに組み込み、検出角の変調により表面に存在するがんの層厚検出が可能であることを示した。また、本技術は西沢助教らが開発している円偏光発光ダイオード(Spin-LED; Spin-polarized Light Emitting Diode)を内視鏡先端に組み込むことにより、体内でのその場観察を可能とする。本技術は潰瘍性大腸炎や肝硬炎などの診断にも期待される。

本研究はドイツの学術誌「Journal of Biophotonics(ジャーナル・オブ・バイオフォトニクス)」3月号に掲載され、掲載号のインサイドカバーに採用された。