Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2016.04.11

プレスリリース

原始紅藻シゾンでアブシシン酸が機能―植物ホルモン獲得のルーツを解明―

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の小林勇気助教と田中寛教授らは、最も原始的な植物である単細胞性の原始紅藻「シゾン」が、塩ストレスに応答して植物ホルモンのアブシシン酸を合成することを発見した。さらに合成されたアブシシン酸が細胞周期の進行を阻害、その阻害機構に細胞内のヘム代謝が関わることを明らかにした。

アブシシン酸はストレス応答や気孔の開閉を司(つかさど)る植物ホルモンで、原始的な植物からの検出例も報告されていることから、様々な植物ホルモンの中でも最古の起源をもつと考えられてきた。しかし、植物が進化のどの段階で、アブシシン酸を植物ホルモンとして獲得したかは謎だった。

被子植物におけるアブシシン酸シグナル伝達機構は非常に複雑で、その全体像の解明には困難が伴っている。原始藻類シゾンにおける詳細を明らかにすることにより、アブシシン酸シグナル伝達機構の起源と進化の解明が期待される。

成果は4月4日、日本の英文学術誌「プラント・アンド・セル・フィジオロジー(Plant & Cell Physiology)」オンライン版に掲載された。