Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2016.08.25

プレスリリース

電気分極の回転による圧電特性の向上を確認―圧電メカニズムを実験で解明、非鉛材料の開発に道―

東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の北條元助教、東正樹教授、清水啓佑大学院生、東京大学大学院 工学系研究科の幾原雄一教授の研究グループは、圧電体の結晶中で、電気分極の方向が回転することにより圧電特性が向上することを、実験的に確認することに成功した。分極の回転は、実用材料であるジルコン酸チタン酸鉛(PZT)の巨大圧電特性の起源といわれながら、これまで実際に圧電特性向上に寄与することが実験的に確認されたことがなかった。

本研究グループは、PZTを模して新しく開発したコバルト酸鉄酸ビスマス圧電体を、圧電特性の評価が可能な薄膜形態で安定化させ、その結晶構造と圧電特性を詳しく調べた。その結果、分極回転の起こりうる結晶構造で圧電特性が向上することを見いだした。また、圧電特性は、結晶歪みの大きな構造、すなわち分極が回転する余地のある構造ほど向上した。今回の結果は環境に有害な鉛を使わない新圧電材料の開発につながると期待される。この成果は独国科学誌「Advanced Materials」のオンライン版で8月24日に公開される。