Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2016.09.28

プレスリリース

ラン藻による有用物質の大規模生産に道を拓く―高価な誘導剤使わずに遺伝子発現を誘導するネットワークを構築―

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の久堀徹教授と肥後明佳特任助教(JST・CREST研究員)らの研究グループは、合成生物学的手法により原核光合成生物であるラン藻(シアノバクテリア)の遺伝子発現を高効率に誘導するシステムを開発した。人工的に改変した遺伝子発現ネットワークをラン藻に導入することで、今までよりも低濃度の遺伝子発現誘導剤を使用、もしくは誘導剤を用いなくても、長時間・強力に遺伝子発現を誘導することに成功した。

ラン藻は、その代謝系を遺伝子操作することで有用物質を生産することの出来る生物として期待されている。肥後特任助教らの研究は、ラン藻の代謝系の改変を実際的に行えるようにするもので、今後、ラン藻を用いて産業上有用な物質を生産する大規模なシステムの開発に道を拓く成果である。同研究グループは今年初め、ラン藻内で生産された含窒素化合物を細胞外に放出させることに成功したが、誘導剤は高価で、持続時間が短いという欠点があった。今回はこの問題を解決したもので、ラン藻による有用物質生産の実用化に一歩近づいたといえる。

本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)「藻類・水圏微生物の機能解明と制御によるバイオエネルギー創成のための基盤技術の創出」研究領域(研究総括:松永是 東京農工大学・学長)の支援を受けて実施したもので、研究成果は、9月22日発行の米国化学会の「ACSシンセティックバイオロジー(ACS Synthetic Biology)」誌電子版に掲載された。