Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2017.11.28

プレスリリース

核分裂における原子核のさまざまな“ちぎれ方”を捉える ―放射性物質の毒性低減に貢献―

国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄、以下「原子力機構」という。)先端基礎研究センターの廣瀬健太郎研究副主幹及び西尾勝久マネージャーらは、東京工業大学(学長 三島良直、以下「東工大」という。) 科学技術創成研究院 先導原子力研究所の千葉敏教授、近畿大学(学長 塩﨑均)大学院総合理工学研究科の田中翔也大学院生らとの共同研究により、核分裂における原子核のさまざまな“ちぎれ方”を捉え、原子核からの中性子放出と核分裂における原子核の“ちぎれ方”の関係を初めて明らかにしました。

核分裂は、ウランのような重い原子核が余分なエネルギーを与えられたときに、変形して2つにちぎれる現象です。この“ちぎれ方”(ちぎれてできた2つの原子核の重さのバランス)を観測することで、原子核がどのように変形して核分裂が起こるかを調べることができます。

放射性物質の毒性を低減するために、高いエネルギーの中性子を原子核にぶつけて起こす核分裂を利用する方法があります。この場合、原子核はいくつかの中性子を出して別の原子核になった後に、さらに核分裂することがあります。このため異なる原子核の“ちぎれ方”が混在し、核分裂がどのように起こるかを調べることができませんでした。本研究では、さまざまな原子核の“ちぎれ方”の実験データと、原子核から中性子が出る効果と取り入れた理論計算を比較しました。その結果、個々の原子核の“ちぎれ方”を初めて捉えることができました。

現在、原子力機構は、本研究の手法によって、人類が取り扱えるであろう最も重い原子核標的である99番元素アインスタイニウム-254を用いた核分裂研究を始めようとしています。本研究成果は、高エネルギーにおける核分裂の理解、そして重い原子核での未だわかっていない核分裂現象の解明にもつながります。このような核分裂に対する深い理解は、核分裂を利用した放射性物質の毒性を低減するための核変換技術への貢献が期待されます。

本研究成果は、2017年11月27日付で、米国物理学会誌「Physical Review Letters」のオンライン版に掲載されました。

本研究は文部科学省の原子力システム研究開発事業による委託業務(「高燃焼度原子炉動特性評価のための遅発中性子収率高精度化に関する研究開発」(平成24-27年度、東工大と原子力機構)及び「代理反応によるマイナーアクチノイド核分裂の即発中性子測定技術開発と中性子エネルギースペクトル評価」(平成27-29年度、原子力機構と東工大)の成果の一部です。