Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2020.12.18

プレスリリース

光合成細胞内のpH測定が可能な発光型タンパク質センサー

細胞内の水素イオンの移動をリアルタイムに捉える

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系 中村俊吾大学院生(研究当時)と科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の久堀徹教授らは、細胞内のpH変化をリアルタイムにモニターできる新しい発光型タンパク質センサーを開発し、光合成反応に伴って細胞内のpHが変化する様子を捉えることに成功した。

細胞内の様々な生理状態の変化を探るために、これまで緑色蛍光タンパク質GFPをベースとするタンパク質センサーが数多く開発されてきたが、これらを光合成生物で用いる場合には、測定に必要な励起光が光合成反応に影響してしまう点が大きな問題だった。本研究では、発光タンパク質とpH応答性の蛍光タンパク質を組み合わせることで、励起光を必要としない新たな発光型センサータンパク質「Luphin」を開発した。

光合成反応では、光合成電子伝達反応によってNADPHが生成されるとともに、チラコイド膜という閉じた膜系の内側に水素イオンが輸送され、酸性の状態にする。Luphinを用いることで、このような細胞内の水素イオンの移動をリアルタイムに捉えられることが確かめられた。さらに、水素イオンの移動が、予想されていた光照射時だけでなく、明条件から暗条件に移したときにも起こり、光合成細胞内の水素イオン動態が様々な因子によって制御されていることが明らかになった。

研究成果は12月1日付け「Journal of Biological Chemistry」電子版に発表された。