Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2020.12.10

プレスリリース

オートファジーが栄養ストレスを迅速に緩和する仕組みを解明

オートファジーの生理学的機能の一端が明らかに

東京工業大学 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センターの大隅良典栄誉教授、細胞制御工学研究センターおよびWorld Research Hub Initiative(WRHI)のメイ・アレクサンダー特任助教、モナシュ大学(オーストラリア)Monash Biomedicine Discovery InstituteおよびDepartment of Biochemistry and Molecular Biologyのプレスコット・マーク准教授の研究グループは、細胞が栄養環境の変化に対して細胞がより迅速に適応する上でオートファジーが果たしている生理学的な役割を具体的に明らかにした。

オートファジーは酵母からヒトにいたるまで、真核細胞の生存と恒常性維持のために機能している仕組みである。これまでオートファジーが誘導される条件や、機能や分子メカニズムについて、そしてオートファジーで分解される細胞質成分や細胞小器官については多くの知見が得られている。しかし生理学的な視点での研究はあまり進んでおらず、例えば、オートファジーによる分解産物が細胞内で再利用される詳細な仕組みについてはほとんど分かっていなかった。

本研究では、栄養環境の変化というストレスに対してオートファジーが誘導され、結果としてミトコンドリアにおけるタンパク質合成の開始に重要なアミノ酸セリンが供給される、細胞の迅速な環境への適応が可能になるという、オートファジーの生理学的機能を初めて明らかにした。本成果によりオートファジーと代謝との密接なつながりが明らかとなった。今後はオートファジーと様々な疾患との関連について研究が進むことが期待される。

本研究成果は、10月7日(英国時間)に英国科学誌「Nature Communications」のオンライン版で公開された。