Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2020.05.11

プレスリリース

50℃で水素と窒素からアンモニアを合成する新触媒

「CO2排出ゼロ」のアンモニア生産へブレークスルー

東京工業大学 科学技術創成研究院の原亨和教授、元素戦略研究センター長の細野秀雄栄誉教授らは、50 ℃未満の温度で水素と窒素からアンモニアを合成する新触媒の開発に成功した。この触媒は豊富なカルシウムに水素とフッ素が結合した物質「水素化フッ素化カルシウム(CaFH)」とルテニウム(Ru)ナノ粒子の複合材料「Ru/CaFH」で、室温で水素と窒素からアンモニアを合成できる。

原教授らはCaFHが低い温度で電子を与える力が強いことに着目し、その学理を低温でアンモニアを合成する触媒の開発に繋げた。アンモニア生産の大幅な効率化だけでなく、自然エネルギーを使った温室効果ガスのCO2排出ゼロにつながることが期待される。

アンモニアは肥料として世界人口の70 %の命を支える人類に必須の化学物質で、水素と空気中の窒素から触媒を介して生産する。しかし原料の水素はメタンなどの化石資源から作られるため、CO2排出は総排出量の3 %を越えている。

水から水素を作ればCO2排出問題は解決するかのようにみえるが、従来の触媒で水素と窒素からアンモニアを合成するには400 ℃近くの高温が不可欠。従来のアンモニア生産を自然エネルギー発電と繋げても発電量の大半はアンモニア生産に費やされ、十分な水素を作れない。水素と窒素からのアンモニア合成の温度を大幅に下げる触媒の開発はCO2排出ゼロのアンモニア生産への道を開く成果である。

本研究成果はネイチャーコミュニケーションズ(nature communications)オンライン速報版に4月24日に掲載された。