Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2020.04.06

プレスリリース

酵母プリオンタンパク質のアミロイド線維形成を直接観察

関連する病態の解明など多様な波及効果に期待

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系の奥田桃子大学院生(研究当時博士後期課程3年)、田口英樹教授および金沢大学ナノ生命科学研究所の紺野宏記准教授、中山隆宏准教授、安藤敏夫特任教授らの研究グループは、出芽酵母のプリオンタンパク質が多量体やアミロイド線維を形成する状況の観察に成功し、今まで不明だったアミロイド線維形成メカニズムの一端を解明することに成功した。

生命活動はタンパク質の機能によって成り立っている。タンパク質は特定の形を形成して働くのが基本だが、老化などの原因で異常な立体構造になることがある。異常構造の一つは「アミロイド」という線維状のタンパク質で多くの病気に関係することが分かっているが、どのような仕組みで線維ができていくのかについて、これまではよく分かっていなかった。

同グループは高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いて、出芽酵母のプリオンタンパク質がアミロイド線維を形成する状況を直接観察した結果、プリオンタンパク質の単量体が立体構造を取らない状態でアミロイド線維末端に結合してからアミロイド線維が伸びることを示唆する結果を得た。

この成果はアミロイド線維というタンパク質の異常状態ができるメカニズムの解明に貢献するとともに、クロイツフェルト・ヤコブ病や狂牛病といったプリオン病、アルツハイマー病などアミロイド線維が関わる病気に関する病態解明などさまざまな波及効果が期待できる。

研究成果は3月23日付の「米国科学アカデミー紀要」電子版に掲載された。