Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2020.02.06

プレスリリース

液-液相分離がオートファジーを制御する仕組みを発見

オートファジー研究は次のフェーズへ

東京工業大学 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センターの大隅良典栄誉教授、微生物化学研究所の野田展生部長、藤岡優子上級研究員、金沢大学の安藤敏夫特任教授、理化学研究所の岡田康志チームリーダー、東京大学の鈴木邦律准教授らの研究グループは、オートファジーの進行を担う構造体の実体が、Atgたんぱく質が液-液相分離した液体状の会合体(液滴注)であることを発見しました。

オートファジーは細胞内のたんぱく質を分解する仕組みの1つです。これまでに、Atgたんぱく質が集まってPASと呼ばれる構造体を形成することが分かっていましたが、Atgたんぱく質が集まる仕組みや形成された構造体の状態はよく分かっていませんでした。

本研究グループは、Atg13たんぱく質の蛍光顕微鏡解析によりPASの性質を明らかにするとともに、試験管内でPASを再構成することに成功しました。そしてPASはAtg13が他のAtgたんぱく質とともに液-液相分離して形成された液滴の状態がその実体であり、この液滴がオートファジーを担うことを初めて明らかにしました。

液-液相分離がオートファジーを直接制御していることを明らかにした本研究の結果は、液-液相分離が細胞内の生命現象全般に広く関与していることを示唆しており、さまざまな細胞内現象について分子機構の見直しが進むことが期待されます。さらに、オートファジーが関係する病気に関して、液-液相分離の制御に着目したオートファジー特異的な制御剤の開発が期待されます。

本研究成果は、2020年2月5日(英国時間)に英国科学誌「Nature」のオンライン速報版で公開されました。