Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2020.02.03

プレスリリース

オートファジーは凝集体でなく液滴状態のたんぱく質を分解する

細胞内の「ゴミ」は溜まる前の処理が大事

JST 戦略的創造研究推進事業において、微生物化学研究所の野田展生部長、山﨑章徳博士研究員(現 東京工業大学 科学技術創成研究院 特任助教)らは、オートファジーはたんぱく質が液-液相分離した液体状の会合体(液滴)を選択的に分解するのが得意である一方、凝集、固体化したたんぱく質の分解が不得手であることを発見しました。

オートファジーは細胞内のたんぱく質を分解する仕組みの1つであり、特定のたんぱく質やオルガネラを狙い撃ちして分解する「選択的オートファジー」も知られています。選択的オートファジーは病原性のたんぱく質を分解することで疾病の発症を抑えていると考えられてきましたが、どのような状態のたんぱく質を効率的に分解できるのか、よく分かっていませんでした。

本研究グループは、酵母Ape1たんぱく質の選択的オートファジーをモデル系として用い、Ape1の脂質膜による隔離過程を試験管内で人為的に再構成することに成功しました。そしてApe1が液滴を作った時にAtg8たんぱく質と受容体たんぱく質の働きで効率的に脂質膜に隔離されること、一方で凝集、固体化したApe1では脂質膜に隔離されなくなることを明らかにしました。

選択的オートファジーがたんぱく質液滴の分解に長けている一方、たんぱく質凝集体の分解が不得手であるという今回の発見は、神経変性疾患の予防、治療薬の開発を進める上で、オートファジーの活性化だけでは不十分であり、凝集体を液滴状態へと変化させる薬剤開発が重要であることを提起するものです。

本研究成果は、2020年1月29日(米国時間)に米国科学誌「Molecular Cell」のオンライン速報版で公開されました。