Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2020.01.29

プレスリリース

超重原子核の新たな核分裂機構を解明

宇宙における元素生成の様相を理解するのに適用可能

東京工業大学 科学技術創成研究院 先導原子力研究所の石塚知香子助教、張旋大学院生、千葉敏教授らは超重原子核ではこれまでウランなどの場合に知られていた質量数に加え、励起エネルギーが10 MeV程度では全く異なる質量数にも顕著なピークが現れることを発見した。長寿命放射性廃棄物LLFPの短寿命化のために開発した動的モデルによりウラン領域から原子番号104~122の超重原子核の核分裂の系統的な計算により実現した。

本研究で用いたモデルで計算可能となった核分裂片の変形度を調べ、ピークにおいては球形に近い原子核ができていることから、この新たなピークは二重魔法数を有する質量数が208の鉛の同位体を中心としていることが明らかとなった。ただし、この新たなピークは励起エネルギーが30 MeVに上がると消失することも分かった。

励起エネルギーが10 MeV程度の超重原子核の核分裂は重力波が検出され話題となっている中性子星とブラックホールの合体時に実現される環境で起きることが分っており、宇宙における元素生成の様相を理解するために適用可能な重要な結論である。特に鉛領域の元素は第三ピークと呼ばれ、元素合成モデルによって再現できたりできなかったりし、正確な核分裂データの提供で宇宙における元素合成モデルの検証も可能になると期待できる。 また、原子番号Z=113のニホニウムなど、新たな超重元素を合成する際にも核分裂は付随して生起する物理現象であり、超重原子核の核分裂を理解することは新元素合成のフロンティアの立場からも重要である。

研究成果は「Physical Review(フィジカルレビュー) C」のRapid Communicationとして現地時間1月27日にオンライン掲載された。

※研究成果は文部科学省国家課題対応型研究開発推進事業原子力システム研究開発事業「高速炉を活用したLLFP核変換システムの研究開発」による。