Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2020.01.14

プレスリリース

長寿命核分裂生成物の半減時間を9年以下に短縮

高速炉を用いた効率的な核変換法を提案

東京工業大学 科学技術創成研究院 先導原子力研究所の千葉敏教授、東北大学の若林利男名誉教授、東京都市大学 工学部 原子力安全工学科の高木直行教授、日本原子力研究開発機構の舘義昭博士らは、原子力発電所の放射性廃棄物に含まれる長寿命の核分裂生成物(LLFP)であるセレン(79Se)、テクネチウム(99Tc)、パラジウム(107Pd)、ヨウ素(129I)の4種について高速炉の炉心周辺に装荷することで、数10万年から1000万年以上の半減期を有するこれらの核種が半分になるのに要する時間を9年以下に短縮する方法を見出した。

この新LLFPターゲット集合体は、YD2およびYH2減速材を組み合わせ、さらにLLFPのテクネチウムを熱中性子フィルター材料として使うことにより、隣接する燃料集合体の熱スパイクを抑制しつつ、効率的な核変換を行うことができる。本方式はLLFPの同位体分離を要さないことも特徴である。

4核種の新LLFPターゲット集合体をナトリウム冷却MOX燃料(ウランとプルトニウムの混合酸化物)高速炉のブランケット領域に装荷した場合、サポートレシオ(SR)1以上を確保しつつ、約8%/年の高い核変換率が達成できる。またLLFPターゲット、YH2およびYD2減速材の材料特性と製造の実験を通じLLFPターゲット集合体の実現性が明らかとなった。さらに、今後の効果的な再処理方法の実現により、これらの核種量を最終的に1/100程度まで低減させる可能性が拓かれた。

文部科学省国家課題対応型研究開発推進事業原子力システム研究開発事業により東工大が委託を受けた「高速炉を活用したLLFP核変換システムの研究開発」の成果で、成果は「Scientific Reports」に2019年12月16日にオンライン掲載された。