Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2019.12.19

プレスリリース

人工細胞の免疫センサー化に成功

分離ステップ不要のデジタル免疫測定系の実現へ

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の上田宏教授と蘇九龍研究員、シンガポール科学技術研究庁(以下、A*STAR)分子工学研究室のShawn Hoon(ショーン・フーン)上級研究員らの研究グループは膜外にリガンド検出部位を持ち、内部にリガンド結合により活性化する酵素を持つ人工細胞(巨大単層膜リポソーム、プロトセル)を構築し、外部に存在する抗体などのターゲット分子を高感度に蛍光検出可能な技術の開発に成功した。

リガンド検出部位としてプロトセル膜上に提示した短いペプチドタグ配列を用い、これらを例えばタグに結合する抗体でクロスリンクすることで、人工細胞内で発現させた不活性な2量体酵素(βグルクロニダーゼ変異体)が4量体になって活性化し、蛍光を発する(図1)。その後、蛍光陽性細胞の数を蛍光顕微鏡やFACSで数えることで、抗体濃度が定量できた(図2)。この方法で、がん治療用ヒト型抗体Herceptinの濃度を、治療時の血中濃度が検出可能な感度で定量できた。さらに膜外からタグと結合し抗原カフェイン依存的に二量体を形成する抗体断片(Nanobody)を付加することで、水溶性物質であるカフェインを定量することにも成功した(図3)。

均一かつ微小なサイズの人工細胞アレイを構築し、1分子由来の結合シグナルを増幅・検出できれば、分離ステップ不要なデジタル免疫測定系を構築できる可能性がある。

研究成果は12月3日に英科学誌「Scientific Reports(サイエンティフィックレポーツ)」にオンライン掲載された。