Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2019.07.10

プレスリリース

植物の酸化還元状態をリアルタイムで検知

チオレドキシンの酸化還元状態変化のセンサーを開発

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の杉浦一徳研究員(研究当時。現職 大阪大学 産業科学研究所 生体分子機能科学研究分野 特任研究員)と久堀徹教授らは緑色植物葉緑体内の酸化還元制御機構の鍵タンパク質であるチオレドキシンの酸化還元状態をリアルタイムにモニターできる蛍光タンパク質センサーCROST(Change in redox state of thioredoxin)を開発し、明暗条件の変化により植物体内でチオレドキシンの酸化還元が変化する様子を捉えることに成功した。

チオレドキシンが光合成の電子伝達系から還元力を受け取ると、分子表面の2個のシステインのチオール基が還元状態になる。還元型チオレドキシンが葉緑体内の様々な酵素分子を標的として働き、酵素分子が持っているジスルフィド結合を還元する。還元された酵素分子は構造変化を起こし、通常活性型になる。こうしてチオレドキシンは光合成が始まるのに対応して、葉緑体内の様々な酵素分子の活性を制御する因子として働く。このため、チオレドキシンがいつどのくらい還元されるかを調べることは、葉緑体の機能制御のメカニズムを探る大切な情報となる。

これまでチオレドキシンの状態を調べるには、葉を瞬間凍結して組織の中のタンパク質分子の状態を化学的に調べる方法が一般的だった。しかし、電子移動は瞬時に起こるため、タンパク質の細胞内の動態を探るにはリアルタイムに酸化や還元状態を探る方法が不可欠だった。

研究成果は6月20日付け、アメリカ分子生物学生化学会誌「Journal of Biological Chemistry(バイオロジカル・ケミストリー)」に掲載された。