Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2019.06.05

プレスリリース

シンプルで万能なカオス的振動回路を設計

小型で効率的なデバイスを実現

東京工業大学WRHIのルドビコ・ミナティ(Ludovico Minati)特任准教授、科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の伊藤浩之准教授らの研究グループは、シンプルながら万能な「カオス信号」を生成する手法を発見した。互いに接続された3つの「リング型発振器」を利用し、発振器間の接続強度が互いに競い合いながら制御されるように設計、小型で効率的なデバイスを実現した。センサー間の無線通信など新たな用途に応用が期待できる。

脳活動、動物の群れ、天気など自然界の現象を示す信号を再現できれば、それらの原理を理解する手がかりとなる。これらの信号は複雑で、究極的にはいわゆる「カオス信号」になる。カオスとはランダム性を意味するのではなく複雑な規則性を持つことを意味する。カオスシステムではわずかなパラメータの違いが大きな挙動変化をもたらす場合もある。またカオス信号は予測が難しいが、多様な局面に存在している。

だが、目的通りの特性を示すカオス信号の生成は難しい。デジタル信号を生成すると消費電力が多すぎる場合もあり、アナログ回路を用いる必要がある。そこで今回、カオス信号を生成する集積回路の作成法を新たに提案した。

この研究は東工大とイタリアのカターニャ大学、トレント大学、ポーランドの科学アカデミーが共同で、東工大WRHIからの一部資金支援により行った。

なお、本研究成果は米国電子電気学会(IEEE)のオープンアクセスジャーナル「IEEE Access」に2019年4月23日に掲載された。