2019.05.27
超短パルス光を用い固体中の量子経路干渉を観測
新しい光励起過程計測方法の開発に成功
東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の中村一隆准教授、萱沼洋輔特任教授と慶應義塾大学 大学院理工学研究科の鹿野豊特任准教授らは、超短パルス光照射をした半導体結晶中で、光遷移過程の量子経路干渉による電子コヒーレンスの崩壊と復活現象が起こること、不透明領域においてもコヒーレント光学フォノン生成に誘導ラマン過程が支配的であることを明らかにした。
高精度に時間制御したフェムト秒パルス対を半導体単結晶(n型GaAs=ガリウム・ヒ素)に照射し、発生するコヒーレント光学フォノンにより変化する反射率を実時間計測した。数十アト秒精度でパルス間隔を変化させることで、電子・フォノン状態の量子重ね合わせ状態をアクティブに制御することに成功し、電子コヒーレンスの崩壊と復活現象を観測した。
また、コヒーレント光学フォノン生成の素過程に関する量子論に基づいた理論計算と比較することで、観測された電子コヒーレンスの振る舞いは、誘導ラマン過程によることを示した。今回の研究により、固体中における高精度の量子状態制御が可能になると期待される。
研究成果は5月20日(米国東部時間)に米国物理学会誌「Physical Review(フィジカル・レビュー) B」のRapid Communication(速報)およびEditor’s Suggestion(注目論文)としてオンライン版に掲載された。