基礎研究機構

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最新情報

2024-4-19
「基礎研究機構若手研究者による挑戦的研究のご紹介」5/12開催

「すずかけサイエンスデイ2024」において、基礎研究機構の塾生4名が、今取り組んでいる挑戦的研究の内容と将来展望をわかりやすく説明します。

「基礎研究機構若手研究者による挑戦的研究のご紹介」
イベント日時:2024年5月12日(日)12:30~14:00(12:00開場)
会場:すずかけ台キャンパス S8棟1階レクチャーホール、またはオンライン

オンライン参加登録

基礎研究機構は、未来のアカデミアを支える基礎研究者を育成する場として、2018年に設置されました。本機構は、3つの専門基礎研究塾と、広域基礎研究塾から構成されています。専門基礎研究塾は、各専門分野の世界的研究者が塾長となって長期間塾生を鍛えるもので、2024年1月現在細胞科学分野の大隅塾に17名、量子コンピューティング分野の西森塾に1名、有機化学分野の鈴木塾に3名の塾生が在籍しています。また、広域基礎研究塾では、全ての分野の若手研究者を対象として3か月間程度研究テーマを落ち着いて考える機会を設けており、これまでに93名の助教が入塾しています。
本講演会では、専門塾生(國重莉奈特任助教)、広域塾修了生(留目和輝助教、前田海成助教、藤井佑太朗助教)の4名が、今取り組んでいる挑戦的研究の内容と将来展望をわかりやすく説明します。


すずかけサイエンスデイWEBサイト

2024-3-30
専門基礎研究塾 有機化学分野 第21回Interactive Seminar

2024年3月30日、第21回Interactive Seminarが行われました。
今回の話題提供者は、友岡克彦 教授(九州大学)
発表題目:  "New Aspects of Science of Molecular Chirality: Novel Method for the Preparation of Enantioenriched Chiral Molecules"

今回のセミナーのテーマは、友岡博士の研究の中から、1)非天然キラル分子の化学: a)キラルケイ素分子、 b)面不斉へテロ環分子
2)アルケニルシランの合成と変換:付加型オゾン酸化、 3)新しいクリック反応素子:DACN、
4)光学活性キラル分子の調製法:DYASIN、が紹介されました。参加者15人、質疑応答を楽しみました。

有機化学分野

2024-4-8
海外研究機関への派遣支援事業「羽ばたけ!若手教職員プロジェクト」2023年度

基礎研究機構で2022年度に立ち上げた、海外研究機関への派遣支援事業「羽ばたけ!若手教職員プロジェクト」は、若手研究者を東工大ANNEX等の海外大学等研究機関へ派遣し、専門研究分野での研鑽を積み、多様な視点と異なる価値観を体得するとともに、自身の国際連携の基礎を構築することを促し、日本の将来を担う若手研究者を育成することを目的としております。
2023年度は専門基礎研究塾生および広域基礎研究塾修了生を対象に募集を行い、審査委員会による審査を経て、3ケ月から6ケ月の長期コース(1名)と、約1ケ月の短期コース(2名)の派遣支援を実施しました。

「羽ばたけ!若手教職員プロジェクト」(PDF)

2024-3-4
基礎研究機構 2023年度成果報告会、塾生ポスター発表会、交流会

次世代の最先端科学技術を担う若手研究者を育成するために東京工業大学が2018年度に設立した基礎研究機構(大竹尚登機構長)の2023年度成果報告会を3月4日(月)午後に開催いたしました。すずかけ台キャンパスS8棟レクチャーホールおよびオンライン配信のハイブリット形式で開催し、出席者総数は70名を越えました。

成果報告会は大竹尚登機構長の司会進行により行われ、第一部では各塾の塾長による基礎研究塾の活動報告を、第二部では塾生による海外派遣プログラムの活動報告を行いました。

第一部は渡辺治理事・副学長から塾生への激励から始まり、大隅良典栄誉教授から改めて基礎研究の重要性をお話いただきました。また、文部科学省塩見みづ枝研究振興局長からはビデオメッセージにてご挨拶をいただきました。

渡辺治 理事・副学長
大隅良典 栄誉教授
文部科学省 塩見みづ枝 局長
大隅良典栄誉教授 基礎研究の重要性

自分の研究人生を振り返えると「科学」が、いかに人間活動の1つであり、歴史の中にあるかを感じている。基礎研究は必ずしも先が予見できず、未知の問題に対するチャレンジという側面が大きい。従って、基礎科学者は「答えを得ること」と同等に「解くべき問題を発見すること」が重要である。そのために自由な発想をして、異なる見方をするための場が必要となり、基礎研究塾の活動はその第一歩だと思っている。大学が担うべき研究の使命を再確認し、10年、30年、50年と先を見据えて、大学でしかできない研究をぜひやって欲しい。基礎研究には多様性と研究課題の継続性が大事であるが、次世代の研究者が基礎研究に注力しにくくなっているのは、大学が抱えている大きな問題の1つである。大学を魅力的な場にすることを、大学教員も含めてみんなで真剣に考えてみる必要がある。科学(Science)と技術(Technology)を相互に理解して、互いにリスペクトにする関係を築いて欲しい。

専門基礎研究塾

大隅良典塾長(細胞科学分野)、西森秀稔塾長(量子コンピューティング分野)、鈴木啓介塾長(有機化学分野)による本年度の活動報告を行いました。

専門基礎研究塾(細胞科学分野)の活動報告 大隅良典 塾長

当専門塾の活動は以下の4つ。
1. 談話会:シニア教員から若手にメッセージを提供。今期は1回実施。
2. コロキウム:国内外の講師を招き、生物学に関する最先端の研究成果を紹介。今期は12回開催。
3. 塾生研究費:研究費として有効活用。
4. 共同実験室・主要共同利用機器の活用。
コロキウムは大事な活動で、参加者も多く盛況な議論が行われており、本塾の特徴でもある。塾生の研究費獲得や、筆頭著者論文の発表も順調に推移している。共同実験室・主要共同利用機器も利用者が増えていて、さらなる推進を図っていく。本塾でも助教の任期の問題はあるが、若手が活躍できるシステムを作る努力をしている。

専門基礎研究塾(量子コンピューティング分野)の活動報告 西森秀稔 塾長

当専門塾の活動は以下の2つ。
1. 会議主催:セミナーを7回開催。特別講義、国際会議、研究会を実施。
2. 塾生研究費:なし
今年度の塾生は1名だったが、学内外の協力教員の協力を得て活動を推進してきた。セミナーの半数は企業と実施。量子コンピューティングの分野は、社会課題を解くプロセスで基礎研究にフィードバックがある面白い分野になっていて、研究室出身者でエキサイティングな研究をしている方とのセミナーは非常に盛況。国際会議も開催。国際先駆研究機構量子コンピューティング研究拠点において大学より十分な支援をいただいた。

専門基礎研究塾(有機化学分野) 鈴木啓介 塾長

当専門塾の活動は以下の2つ。
インタラクティブセミナー-:今期は国内外の講師により5回開催。
塾生研究費:塾生の研究活動費として使用。
今年度もファシリテーターで小坂田耕太郎特任教授をはじめ支援教員の協力を得て活動。自由闊達にインタラクションが起こる事を期待した「インタラクティブセミナー」を今期は5回開催。来期は国内外の研究室オンライン訪問をして、実験室の運営やノウハウ等をみる機会を設けたい。

広域基礎研究塾

広域基礎研究塾の大竹尚登塾長より、本年度の広域基礎研究塾の活動報告、並びに伊能教夫副機構長より、広域基礎研究塾の入塾効果の分析について報告を行いました。

広域基礎研究塾の活動報告 大竹尚登 塾長

今期は15名の塾生が活動を行い、累計塾生は93名となった。 当広域塾の活動は以下のとおり。
1.オリエンテーション、2.個別面談、3.研究分野紹介発表会、4. 塾生向け講演会、5.WS「未来社会と自身の研究との繋がりを考える」、6.大隅先生を囲む会、7.研究テーマ設定発表会、8.成果報告会
広域基礎研究塾参加中の1-6期生の研究エフォートは、62.3%から75.1%に上昇いている。修了生にはアンケートを実施しており、概ね好評である。共通して良かった点は、研究の視野を拡げることができたこと、共同研究の機会を設けることができたことがあげられる。反省点としては、塾生同士がフリーで議論できる場をもっと増やしてほしいとう意見があった。また、研究エフォート9割に向けたエフォート調整については例年課題として指摘いただいている。
研究支援としては、「新研究挑戦奨励金」「新研究展開奨励金」「羽ばたけ!若手教職員PJ」を実施。挑戦奨励金は19件(個人15件、グループ研究4件)を採択。展開奨励金は11件(個人7件、グループ4件)を採択。それぞれグループ研究も申請・採択されているのが、本奨励金の特徴である。海外派遣では、長期1件、短期2件の支援を行った。また、今期、新たな企画として大学統合に向けて若手教員との放談会を開催した。

広域基礎研究塾の入塾効果の分析 伊能教夫 副機構長

広域基礎研究塾の活動趣旨では10年20年後の長いスパンで研究活動をみることになっている。時期尚早ではあるが、塾の活動がどれくらい塾生の刺激になっているのかについて、現時点で追跡可能な指標をもとに、変化の兆しを調査した。変化の兆しは、広域基礎研究塾の目的である「長期的視点に立つ新しい研究テーマ設定」「異なる分野の研究者とのネットワーク形成」に焦点を絞り、広域塾修了後の研究発表、科学研究費助成事業の採択状況、異分野の研究者との連携を調査している。今年度は第3期生を調査対象に加えた。
第1・2期生:研究実施の難易度によって進展の程度は変わってくるが、おおむね順調に研究が進んでいることが伺えた。追跡している研究テーマ47件のうち科研費に採択されたのは32件、採択率は約7割である。(入塾後に新しく生まれたテーマを除くと5割程度。)
第3期生:新型コロナウィルスの影響で大変な時期だったが、追跡調査で進展が見受けられ、入塾後も頑張って研究を実施している感触を受けている。
現段階では、半定量的な分析方法ではあるが、塾生は独自の新研究テーマに挑戦している姿勢がうかがえる。また,研究ネットワークの広がりも見られることから,今後の展開が期待される。

海外派遣報告

第二部では、大竹尚登機構長から「羽ばたけ!若手教職員PJ」を紹介した後、同プログラムにより2022年度および2023年度に派遣された6名の塾生(長期2名、短期4名)による活動報告を行いました。

<長期派遣>

[ 白根 篤史 塾生(広域基礎研究塾3期生)2022年度長期派遣 ]

派遣先:ジョージア工科大学(アメリカ)
派遣による成果等:
海外派遣の目標として研究発表に繋がるような研究を掲げ、派遣修了後、国際学会International Astronautical Congress2023にて成果発表を行った。ジョージア工科大学の研究者だけではなく、訪れた研究室で様々な就職先へ進む卒業生とのネットワーキングができたのも大きな成果だった。共同研究に発展しつつあり、資金獲得に向けてチャレンジしている。 海外派遣を考えている方へ:
授業の調整が必要なので、派遣を考えるなら準備は早めにした方がよい。

[ 笹原 帆平 塾生(広域基礎研究塾5期生)2023年度長期派遣 ]

※派遣先よりオンラインで参加
派遣先:カリフォルニア大学サンタクルーズ校(アメリカ)
派遣による成果等:
単独での理論研究に課題を感じて、共同研究による解決の可能性を検討してきた。現在、まだ派遣期間中で、来週に米国内のステークホルダーを招待してトピックの方向性を検討するワークショップを開催予定。論文執筆準備や研究費応募に向けて動き始めており、帰国後の連携準備も進んでいる。また、研究室以外でもセミナーや招待講演を行った。 海外派遣を考えている方へ:
海外でのネットワーク作りが大事なのはもちろんだが、半年間を空けることになるため学内業務調整によるスケジュール管理も必要。これらは、基礎研究機構の後ろ盾無しには実施することは難しかったので、行けるチャンスがあるなら必ず応募してください。


<短期派遣>

香月 歩 塾生
當麻 真奈 塾生
朱 博 塾生
荒井 慧悟 塾生
[ 香月 歩 塾生(広域基礎研究塾4期生)2022年度短期派遣 ]

派遣先:アーヘン工科大学(ドイツ)、レンヌ第二大学(フランス)
派遣による成果等:
派遣時には漠然としていた計画が、受け入れ教員の協力を得て新たな研究テーマの構築につながった。また、調べてみたかったテーマについて調査することができ、今後の研究に展開できるアイディアが得られた。人脈作りもできたほか、子どもを連れて派遣したことで研究者として、母としての人生経験も積めた。
来年度の参加を考える教員に向けて:
不安を抱えながらの渡航だったが、現地に行かないと得られない情報、人脈、肌感覚があった。派遣を考えている方は、ぜひ機会を活かしてほしい。また、大学からのサポートは難しかったが、アーヘン工科大学敷地内にある保育園を紹介してもらうことができ、子どもを連れて派遣することができた。

[ 當麻 真奈 塾生(広域基礎研究塾3期生)2022年度短期派遣 ]

派遣先:アーヘン工科大学(ドイツ)、ユーリッヒ総合研究機構(ドイツ)、レンヌ第一大学(フランス)、Austrian Institute of Technology(オーストリア)、ミュンヘン工科大学(ドイツ)
派遣による成果等:
セミナーでの講演、研究室での研究紹介を行い、研究設備を見学した。実際に実験をみせてもらい、論文を読んでいるだけでは難しい部分を直接見たことで、帰国後新たな実験に着手することができた。継続してコミュニケーションをとることで、共同研究につなげていきたい。
来年度の参加を考える教員に向けて:
学会開催地に縛られないので、訪問地の自由度が高く、複数の研究機関を訪問できるのでネットワーキングに最適。また、日々の研究や教育活動から離れることで、心身の充電もできた。

[ 朱 博 塾生(広域基礎研究塾4期生)2023年度短期派遣 ]

派遣先:ミネソタ大学ツインシティ校(アメリカ)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(アメリカ)
派遣による成果等:
研究の紹介やセミナーで講演を行ったほか、共同研究でやりたいことの議論を進めることができた。新しいネットワーク構築もでき、共同研究につながる実験を行うことができたので、現在、国際助成金申請を計画している。
来年度の参加を考える教員に向けて:
Be brave to show off your nice work abroad.
Enjoy the chance to talk to your reviewers.

[ 荒井 慧悟 塾生(広域基礎研究塾4期生)2023年度短期派遣 ]

派遣先:スタンフォード大学、Prognomi Q社、PDF Solutions社、Tech Cruch Disrupt2023(国際会議)、カリフォルニア大学バークレー校
派遣による成果等:
共同研究テーマで協力していくことを約束し、若手研究者同士、お互いの強みを生かして将来的なビジョンを共有した。シリコンバレーでは、若手研究者の選択肢にスタートアップが入っているのが印象深かった。日本国内ではポスドクはネガティブなイメージであるが、シリコンバレーのディープテックではポスドク経験が必要最低限とのことであった。また、学生・若手研究者向けの豊富な支援があり、多様なスタイルを尊重していると思った。
来年度の参加を考える教員に向けて:
海外研究者とのネットワーク構築だけでなく、色んなことを立ち止まって考えることができる機会になった。

質疑応答も活発に行われ、益一哉学長による閉会の辞により成果報告会は盛況のうちに終えました。なお、同日は文部科学省大学研究基盤整備課から、水谷啓子専門職をはじめ4名の職員が来学され、科学技術創成研究院の研究室視察の後、成果報告会にご参加いただきました。


益一哉 学長
ポスター発表会・懇談会

成果報告会終了後は、すずかけ台キャンパス大学会館ラウンジにて専門基礎研究塾・広域基礎研究塾第6期生全員と、広域基礎研究塾OB・OGである第1~5期生の有志によるポスター発表会および懇談会を行いました。
発表ポスター43件を前に熱心な討論を繰り広げ、今後の基礎研究機構の展開や本学の将来について意見を交わしました。

2024-3-4
基礎研究機構 広域基礎研究塾セミナー

基礎研究機構は、国内外においてトップレベルで活躍できる次世代の研究者を育成・輩出するための活動の一環として、2024年3月4日(月)に「若手研究者向けセミナー」を、すずかけ台キャンパスS8棟レクチャーホールおよびオンライン配信のハイブリット形式で開催いたしました。

本年度のセミナーは、東京工業大学 渡辺治理事・副学長(研究担当)と 東京医科歯科大学 大島茂副理事(研究環境担当)をお招きし、会場・Zoomあわせて約70名にご参加いただきました。

広域基礎研究塾の伊能教夫副機構長の司会により進行され、大竹尚登機構長による開会の辞に続き、東京工業大学 益一哉学長から挨拶がありました。セミナー前半では、大島先生から東京医科歯科大学での若手研究者支援の取組み紹介と、若手研究者に期待することについて、渡辺先生からは大学統合にむけた検討内容の紹介と、研究をどう盛り上げていくのかをお話いただいきました。

東京医科歯科大学 大島茂副理事(研究環境担当)

東京医科歯科大学では戦略の中心にSocial Impactをげてきたが、Social Impactとはそもそも何か、いかにして研究評価をするか、そこが分からないと気持ちよく研究できない。現在は、大学評価や個人評価においても論文のインパクトファクターではなく、社会的なインパクトも評価している。若手研究者には、世界標準を目指したインパクトを意識した研究と、根源的な問いに答える科学を追求することで、社会に貢献する東京科学大学をつくりあげて欲しい。


東京工業大学 渡辺治理事・副学長(研究担当)

大学統合発表後、両学の共同研究を進めるために2023年1月に科学技術創成研究院にて異分野融合研究助成を実施。今年度は大学としてマッチング支援を実施し、30件採択した。両大学から共同研究をしたいとう声が多く届いているのは非常に嬉しい。統合後の研究戦略は、両大学の重点・戦略分野に加えて、統合当初からスタートできる短中期の取組と将来を見据えた中長期の取組みを策定している。コンバージェンス・サイエンスは単なる融合研究だけではなく、新しい分野を作ることで、未来の社会に貢献する分野をつくる収斂した多元科学だと考えているが、コンバージェンス・サイエンスについて本日皆さんと一緒に議論したい。東京医科歯科大学の若手研究者支援センターや東京工業大学の基礎研究機構で行っている取組みは、まさに新しいチャレンジを応援する仕組みなので、統合後も一緒に支援をしていく。

セミナー後半は、大竹尚登機構長をモデレーターに迎え、参加者と活発なフリーディスカッションを行い、大変盛況でした。
---ディスカッション内容より

歴史上インパクトを残した研究は、最初からインパクトを考えていたわけではないのではないか。

―インパクトを意識した研究とは、社会的インパクトだけではく、基礎研究で新しい技術や知見を加えることでブレイクスルーも起こすことを含めてインパクトである。また、基礎研究の面白さや素晴らしさを多くの人に理解してもらうことを“攻める基礎研究”と呼んでいて、基礎研究はこんなに素晴らしいのだ!と感動させることもインパクである。

サイエンスの細分化が進んだ後に、元に戻るのではなく、今まで考えつかない組み合わせを考えるのがコンバージェンス・サイエンスなのではないかと考えている。

―学問の多様性を許容し、肯定し、拡げていくことで新しい領域がつくられるのではないか。コンバージェンス・サイエンスの手前にある多様性が大事で、その根幹に基礎研究がある。科学的集合知が集まって、見たことがない新しい領域を作っていくイメージ。新しい研究では、すぐに成果がでないこともある。まず研究資金に応募できたことを評価することも大事であり、新しい一歩を踏み出すための支援や評価方法を大学として考えている。

新しい研究グループの形として、Decentralizedなグループも考えられるか?

―全員がPIになった時の理想型の1つとして、お互いの独自性を尊重しつつPIが集まってグループ研究する仕組みはあると思う。研究の責任を取る人はいないといけないが、研究をフラットにするという意味では、非常に面白いアイディアである。

コンバージェンス・サイエンスを生むためには、新しいグループ研究が重要視されていくが、グループを作れるかどうかも評価になっていくのか。その場合、個人の寄与度をどう考えるのか。

―個人の評価としては、アイディアを出した人が責任著者になっている。また、グループの中で自然とリーダー的な人が決まってくるものだとも思う。チームで主張できることと、個人で主張できること、それぞれに対して評価するようになっていくのではないか。東京科学大学は世界標準を目指していくので、執行部でも海外の事例等を参考に評価の仕組みを勉強している。

社会的なインパクトを生むために、非営利な活動や、学外での活動など、副業、兼業が必要になってくる。現在は規定が厳しいと思うが、仕組みは考えているか。

―スタートアップには時間がとられるので、東京科学大学のスタートアップ増強戦略を検討している。また、スタートアップを頑張っている人にエフォートを割いてもらうことができる仕組みも検討したい。ただ、スタートアップにエフォートを割くことを大学が認めていても、同僚の研究者等にはエフォートの部分が見えにくく、誰でも分かりやすく認識できる仕組みがあると良いと思っている。良いアイディアがあったらぜひ提案してほしい。

ディスカッションの様子

2024-1-18
基礎研究機構成果報告会および若手研究者向けセミナー(3/4)のお知らせ

基礎研究機構成果報告会のお知らせ

今年度の成果報告会は、会場とオンラインのハイブリッド形式で開催いたします。
 開催日時:2024年3月4日(月)14:40~16:50
 会場:東工大すずかけ台キャンパス S8棟 レクチャーホール
たくさんの方々のご参加をお待ちしております。

若手研究者向けセミナーのお知らせ(学内者限定)

2023年3月4日(月)に、学内者限定にて広域基礎研究塾(若手研究者向け)セミナーを会場とオンラインのハイブリッド形式で開催いたします。

2023-12-8
専門基礎研究塾 有機化学分野 第20回Interactive Seminar

2023年12月8日、第20回Interactive Seminarが行われました。
今回の話題提供者は、田中克典 教授(東京工業大学)
発表題目:  "Therapeutic In Vivo Synthetic Chemistry"

今回のセミナーのテーマは、田中博士の最近の研究“生体内合成化学治療”、すなわち疾患部位で薬剤を合成し、その場で治療に供するという研究でした。夢のような話ですが、もし実現できれば、薬剤送達に革新をもたらすことができます。セミナーでは、体内で高度な有機合成反応を用いて薬剤や機能性分子をその場合成し、所望の機能が発現した例が紹介されました。参加者10人、質疑応答を楽しみました。

有機化学分野

2023-10-11
細胞科学分野の小谷哲也特任助教らの研究内容が、東工大ニュースに掲載

専門基礎研究塾 細胞科学分野の小谷哲也特任助教らの研究内容が、東工大ニュースに掲載されました。

東工大ニュース:オートファゴソームの“口”を大きくする因子を発見
専門基礎研究塾 細胞科学分野の小谷哲也特任助教、中戸川仁教授らは、オートファゴソームの形成時に、伸張中の隔離膜の開口端に局在化する因子として、Atg24複合体を同定した。さらにAtg24複合体が、伸張中の隔離膜の開口部を大きく開き、リボソームなどの大きな細胞質成分をオートファゴソームに取り込むことが可能になることを明らかにした。
オートファジーは、オートファゴソームと呼ばれる膜小胞で細胞質の一部を取り囲み、液胞またはリソソームに運んで分解する機構である。オートファジーが誘導されると、隔離膜と呼ばれるカップ状の膜が細胞質成分を取り囲みながら伸張して球状になり、最終的に開口部が閉じることでオートファゴソームが形成される。この際には、隔離膜が大きな開口部を開けながら伸張することが分かっていたが、この形態がどのようにして維持されているのかはよく分かっていなかった。
本研究では、オートファゴソーム形成時の形態制御機構にAtg24複合体が関与していることを明らかにした。また隔離膜の開口部の大きさを変えることによってオートファジーで分解する成分を選択するという新たな制御の仕組みを提唱した。
本研究成果は東京工業大学 科学技術創成研究院の小谷哲也特任助教、中戸川仁教授、大隅良典栄誉教授、京都大学 医生物学研究所の境祐二特定准教授、順天堂大学 大学院医学研究科の角田宗一郎准教授らによって行われ、9月19日(現地時間)に英国科学誌「Nature Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)」で公開された。
詳細は、東工大ニュースをご覧ください。

2023-10-4
量子コンピューティング分野の荒井俊太助教らの研究内容が、東工大ニュースに掲載

専門基礎研究塾 量子コンピューティング分野の荒井俊太助教らの研究内容が、東工大ニュースに掲載されました。

東工大ニュース:量子アニーリングの有効領域拡大の可能性を開く
荒井俊太助教と西森秀稔特任教授は、複雑な構造を持つ連続変数関数の最適化問題に量子アニーリングを適用してさまざまな古典アルゴリズムと比較し、理想的な環境下における量子アニーリングの高度な有効性を実証した。
量子アニーリングは離散変数を持つ組合せ最適化問題を対象として開発されたが、その直接的な対象外である連続変数関数の最適化問題も社会には数多くあり、適用範囲の拡大が望まれていた。本研究では連続変数を近似的に離散表現する手法を適用し、D-Wave社の量子アニーリング実デバイス、理想的な量子アニーリングの直接的なシミュレーション、連続変数や離散変数向けの各種古典アルゴリズムを比較した。その結果、理想的な量子アニーリングは実デバイスおよび古典アルゴリズムに比べて明確な優位性を持っていることが明らかになった。連続変数最適化問題で今回のような大規模かつ系統的な比較研究はこれまでに例がなく、量子アニーリングの有効な応用領域の拡大に向けて新たな展望が開かれた。実デバイスは、ノイズのために量子アニーリングの本来の特性を生かすには至っていないことも示され、今後、ハードウェアの進展に期待がかかる。
本研究は東北大学の押山広樹特任助教との共同研究として行われ、10月2日(現地時間)にアメリカ物理学会が発行する「Physical Review A」に掲載された。
詳細は、東工大ニュースをご覧ください。

2023-8-29
専門基礎研究塾 第10回大隅塾談話会を開催

2023年8月29日に、専門基礎研究塾 細胞科学分野では、以下の談話会を開催致しました。

第10回大隅塾談話会

話題提供:Frank Uhlmann (英国王立協会フェロー, フランシス・クリック研究所グループリーダー, 科学技術創成研究院 特任教授)
話題:  "From Quarks to Chromosomes"

今回は、染色体動態の研究分野で世界をリードする研究者、フランク・ウールマン博士をお招きし、「クォークから染色体へ」と題するご講演を行っていただきました。講演では、ウールマン博士のこれまでのキャリアを振り返るとともに、研究者になる過程で経験したことや学んだことを若手研究者に向けて語っていただきました。

大学院生だったウールマン博士は、スローン・ケタリング大学のジェラード・ハーウィッツ先生の指導のもと、複製因子Cと呼ばれる特定のタンパク質複合体の研究に取り組みました。研究自体は派手なものではありませんでしたが、大きくても中途半端な研究よりこのような小さくても堅実な研究こそ重要だと博士は語りました。その後、ウィーンの分子病理学研究所に移り、キム・ナスミス先生のもとで遺伝学を学ばれました。到着早々、esp1変異体に対するマルチコピーサプレッサーのスクリーニングを命じられたそうですが、キム先生は2ヶ月の休暇に出かけてしまいました。そこでその代わり、ウールマン博士はウェスタンブロッティングでコヒーシンの切断を検出することにし、何度も試みた末、コヒーシンの挙動を追跡することに成功しました。そして最終的に、コヒーシン切断とEsp1との関連性を見出すことができたと語りました。

グループリーダーとなったウールマン博士は、さまざまな方向に研究を広げています。その中には、コヒーシン切断以外のセパラーゼの役割の探求、コヒーシンのゲノムワイドな局在を支配する制御機構の研究、試験管内での姉妹染色分体結合の再構成、染色体構造を形成する分子機構の解明などが含まれています。講演の中で、「予期せぬことを期待する」、「科学は趣味であり、仕事ではない」など科学に対する博士の姿勢を伝えていただき、聴衆全員が大いに刺激されました。

2023-7-31
広域基礎研究塾 2023年度第6期生 研究テーマ設定発表会

2023年7月31日9時50分~17時00分に大岡山キャンパス本館第2会議室にて、広域基礎研究塾2023年度6期生15名による研究テーマ設定発表会を開催しました。この発表会は、これまでの広域基礎研究塾の活動を通じて得た体験も踏まえ、研究エフォートを高めて熟慮した末に導いた、自分自身の研究構想を語るイベントです。各塾生は専門分野以外の研究者にも分かり易く10分間で発表し、続く10分間で質疑応答する形式を取りました。
「研究分野紹介」を始めとした塾生同士の交流を通して得た着眼点を組み込んだ内容、「未来社会と自身の研究との繋がりを考えるワークショップ」で取り組んだバックキャストティング手法や、未来社会シナリオから着想したテーマ、「大隅先生を囲む会」で大隅先生に伺った“人がやらないことをやる”というメッセージを受け“本当にやってみたいこと”に挑戦することを立脚点としたテーマなど、広域基礎研究塾の活動から得た気付きを発展させた研究構想を発表しました。何れの発表も研究者をワクワクさせるロマンと問いに満ち溢れていて、本学若手研究者の底力を強く感じさせるものでした。発表後の質疑は50件を超え、自分の先入観から飛び出て、互いの発表に刺激を受けている様子が感じとられました。自分の専門分野で応用できそうなアイディアを質疑応答で共有する場面もあり、異分野融合研究の可能性を感じる場ともなりました。今後、それぞれの塾生の研究構想が、各々の専門分野の先輩・同僚との議論を通じてブラッシュアップされ、さらに様々な協力者との連携を経て結実することを大いに期待します。本発表会の終了後には、修了証授与式を執り行いました。
なお、広域基礎研究塾では今年度も新研究挑戦奨励金の募集を開始します。本奨励金は、塾生が新たに設定した研究テーマへの挑戦を支援するために、2019年度に創設したものです。2019年度から2022年度の4年間で、累計66件の研究テーマを支援してきました。
塾生全員に広域基礎研究塾の活動の中で練り上げた挑戦的な研究テーマ提案を期待しています。新研究挑戦奨励金は広域基礎研究塾の担当教員による審査を経て採択課題を決定し、9月に研究費が支給される予定です。

2023-8-2
細胞科学分野の三輪つくみ研究員らの研究内容が、東工大ニュースに掲載

専門基礎研究塾 細胞科学分野の三輪つくみ研究員らの研究内容が、東工大ニュースに掲載されました。

東工大ニュース:熱ショックタンパク質発現制御の新たな仕組みを20年ぶりに発見
専門基礎研究塾 細胞科学分野の三輪つくみ研究員、田口英樹教授の研究グループは、熱ショックタンパク質(ヒートショックプロテイン:Hsp)の一種がストレス応答の制御を行う新たな仕組みを20年ぶりに発見した。
細胞に熱などのストレスがかかると、凝集体と呼ばれるタンパク質でできたゴミが発生する。この凝集体は細胞内に蓄積すると毒性を示すため、どのような生物もタンパク質の凝集を抑制するシャペロンと呼ばれるタンパク質群を備えている。このシャペロンの一種である熱ショックタンパク質(Hsp)は、凝集体の代表的な発生要因である熱ストレスによって合成が促進される。Hspの不必要な合成を防ぐため、その合成を制御する因子の細胞内での存在量は厳密に調節されている。
研究グループは、大腸菌のHspの一種である低分子量Hspが、Hspの合成制御因子σ32の細胞内での存在量を制御する新たな仕組みを発見した。Hspが既に生産されたσ32の安定化や分解によってその存在量を調節する仕組みは、20年以上前の研究で知られていた。しかし今回発見された仕組みは、σ32の生産を抑制することで存在量を調節するもので、より迅速かつ厳密なσ32の存在量制御を可能にする。
この成果は、既に確立したと考えられていたσ32の制御研究に未知の領域が存在することを示すものであり、ストレス応答という生命に普遍的な現象に対する理解をさらに深めるものとも言える。研究成果は7月31日付の米国の学術誌「Proceedings of National Academy of Sciences of United States of America(米国科学アカデミー紀要)」電子版に掲載された。
詳細は、東工大ニュースをご覧ください。

2023-8-2
細胞科学分野新規入塾

2023年8月2日に基礎研究機構 専門基礎研究塾 細胞科学分野の入塾式を開催しました。大隅良典塾長から塾生への激励と入塾証の授与が行われました。

左から大隅良典塾長、SHIN JIHYE 特任助教、大竹尚登機構長

2023-7-14
細胞科学分野の坪内英生助教らの研究内容が、東工大ニュースに掲載

専門基礎研究塾 細胞科学分野の坪内英生助教らの研究内容が、東工大ニュースに掲載されました。

東工大ニュース:減数分裂期の遺伝情報交換を促進する機構を解明
専門基礎研究塾 細胞科学分野の坪内英生助教、岩崎博史教授と国立台湾大学の李弘文教授(Prof. Hung-Wen Li)らの国際共同研究グループは、減数分裂期に誘導される相同組換えの活性化のメカニズムを一分子レベルで明らかにした。
遺伝情報を次の世代に伝える上で、減数分裂は必須の役割を果たしている。減数分裂期には、父方と母方の遺伝情報が相同組換えというメカニズムにより積極的に撹拌され、これが生命の多様性を生む原動力となる。本研究では、この過程で中心的な役割を果たすDmc1という相同組換え酵素が2種類の因子により全く異なる様式で活性促進されることを、一分子解析技術を用いて明らかにした。減数分裂期の相同組換え異常は不妊や遺伝性疾患(ダウン症候群など)を引き起こすことから、そのメカニズムの解明は医学的見地からも大変重要と考えられる。
本研究は、7月4日(日本時間)に科学雑誌「Nucleic Acids Research」のオンライン速報版で掲載された。
詳細は、東工大ニュースをご覧ください。

2023-7-13
広域基礎研究塾 2023年度「大隅先生を囲む会」

2023年7月13日15:30~17:00に、広域基礎研究塾では「大隅先生を囲む会」を開催致しました。この会の目的は、世界的に著名な研究者から、ご自身の半生や研究ヒストリー、若手研究者への想い等、普段聞くことが出来ない話題をご提供頂き、聴衆となる若手研究者は、講演や質疑応答の中から自分自身の発想のヒントや研究への活力を得ると共に、キャリアパス構築に役立てることを目指すことにあります。
今年も2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞された大隅良典栄誉教授をお招きし、18名(本年度塾生15名、昨年度塾生3名)が参加しました。
大隅先生からは、助手時代の研究の進め方、転換期とその背景、研究室を主催した後の新たな研究「オートファジー」への取組み、ノーベル賞受賞に至るまでの過程に加えて、基礎研究の重要性、日本の研究者が置かれている状況、若手研究者への期待などを講演いただきました。その後、大隅先生から塾生と意見交換の時間をとりたいというご提案で、自由討論の形で質疑応答が行われ、塾生からの悩みや疑問に対して真摯にお答えいただきました。
講演では「人がやらないことをやりたい」と大隅先生の信念についてお話がありました。大隅先生ご自身はこの信念に基づき研究を続けてきたが、日本人が苦手な部分でもある。さらに、現在の学生は失敗を恐れる傾向が強くなっていることに危機感を抱いている。新しい事をやってみて、自分の疑問を解決することの喜びにつなげることが、研究者の大事な心意気である。また、日本社会が大学に対し「(短期的に)役に立つことを」を求めすぎていて、大学や研究者の社会的使命が認知されていない。人間社会が発展するために、科学的なものの見方や考え方が広がり、研究が素晴らしい職業だといえる社会になり、研究者が単純に「研究が面白い」と言えるようになって欲しいとのメッセージをいただき、参加者全員が自身の研究だけでなく、大学教育の在り方を考える機会となりました。

講演会後に開催した懇談会でも、大隅先生は引き続き塾生一人一人に丁寧に向き合って下さいました。塾生には、この経験を自身の研究につなげることはもちろん、教育活動にもいかしてほしいと思います。
塾生と大隅先生の質疑応答の一部を以下にご紹介します。なお、「大」は大隅先生からのご意見、「塾」は広域塾生からの発言です。

  • 塾:現在は深層機械学習が流行っている。自身はそれを避けて古典的な技術を研究しているが、学会の人が減って来て不安である。どうすれば良いか。
  • 大:流行りのことをやらないと不安になるが、信念をもってやれば大丈夫。与えられた課題を早く解くことよりも、本質の追求を考えるのが良い。
  • 塾:創薬研究をしていると、出口に創薬が求められる。その手前の化合物の効能をみる研究をしたいが、産学連携になると「薬になるのか」と聞かれてしまう。大隅先生の産学連携に対するお考えは。
  • 大:大学と企業は違う役割を担うのが産学連携の基本。双方の役割を明確にした上で研究をしないと、大学が企業の下請けになってしまう危惧がある。対等な立場で連携することを前提に研究費を支援してもらうことが必要。
  • 塾:実学に近い研究分野である、社会工学でテーマ設定についてどう考えるか。
  • 大:実学で大切なことはたくさんある。科学とは異なり、限定された時間で解決を求められる時に、原理的なところに立ち戻ることも重要。人の役に立ちたいと大学に入ってくる学生もいるが、本当に役に立ったかを検証するのは時間がかかる。数年で役に立つ研究は短期間で役に立たなくなる場合がある。実学を扱う研究者が「本質的な問題」を大事にする視点を持つことが大切。
  • 塾:人がやっていないことを考えるのは大切だと感じた。大隅先生と同じテーマを研究してきた人と違った部分は何か?
  • 大:研究者は幸運であることも必要で、タイミングもある。素晴らしい事を考えていても10年早いこともある。一つのことを続ける精神は大切。自分の引き出しにやりたいことを持ち続けること、夢をもつことが大事。
  • 塾:「今面白いこと」と「やれたら面白いこと」両方持っているといい?
  • 大:それに加えて、やっていることの本質が必要。答えが出て終わりではなく、答えが出たときに、その先に何があるかを考えることが大事。根底に持っているものがあれば、ライフワークがみえている。
  • 塾:M1になると進学のモチベーションが下がり、卒業するための研究になっている。研究の楽しさを自分自身の姿勢として学生に見せる必要があると気付かされた。
  • 大:学年が進むことに進学意識が下がるのは、大学全体の問題。学生、若手研究者をエンカレッジしてチャレンジングなことができる環境が必要。
  • 塾:学生が失敗を嫌う傾向にあるのは、理系に進む人は高校まで答えがある学習をしてきたからでは?
  • 大:受験は早く結果を求める訓練になっている。「科学が文化として認められる社会」と言っている真意はそこにある。研究者が大事にされ、リスペクトされ、人間社会にとって大切な存在だと社会に認識して欲しい。自由な発想をする時間を与えることが必要であることも含め、大学人が社会で果たす役割を、社会に認知される取り組みが必要。
  • 塾:学生は授業数が多く、大学側はスコアを求めている。そこから研究を始めたときに、いきなり「失敗していいからチャレンジを」というのは難しいと考えている。どう変えていけば良いか?
  • 大:東工大は授業重視しすぎている。授業はどうしても受け身で、知識偏重になるのでそこを変えるといい。以前は、マスターはドクターで研究するための訓練期間でもあった。2年間就職活動を強いられるマスターが日本社会で無駄になっている。研究者になろうという意識が小さくなっており、大学院制度を変えないと日本の大学はダメになると思っている。
  • 塾:基礎研究を文化として根付かせるためには、国民からの共感を得る活動が必要になる。若手研究者ができる活動はどのようなことがあるが、財団の活動などを通して感じていることがあったら聞きたい。
  • 大:基礎科学において「ほら役に立ったでしょう」というのは間違っていると思っている。基礎科学研究は役に立つことじゃないと研究者が言える環境が必要。

2023-7-8
専門基礎研究塾 有機化学分野 第19回Interactive Seminar

2023年7月8日、第19回Interactive Seminarが行われました。
今回の話題提供者は、河岸洋和 教授(静岡大学)
発表題目:  "Chemistry and science of phenomena involving mushrooms"

今回の河岸教授のセミナーは参加者19人、同博士の長年の研究課題“キノコの科学”に関する二つの話題に関する質疑応答を楽しみました。
第一には、2004年に多発した、日本で広く食されてきたスギヒラタケの摂取による急性脳症に関するものでした。粘り強く原因を追求した結果到達した“3成分発症機構”が紹介されました。
第二の話題は、フェアリーリング形成菌から発見した三つのプリン化合物が新植物ホルモンであり、植物に普遍的に内生し、それらが様々なストレス耐性を与えるという内容でした。

有機化学分野

2023-7-7
広域基礎研究塾 2023年度第6期生ワークショップ「未来社会と自身の研究との繋がりを考える」

2023年7月7日13時30分~17時00分に、大岡山キャンパス本館4階第一会議室にて、広域基礎研究塾の第6期生を対象としたワークショップ「未来社会と自身の研究との繋がりを考える」を、基礎研究機構と本学の未来社会DESIGN機構(以下、DLab)との共催で行いました。
本ワークショップは、塾生個々の研究を俯瞰的に見つめ直す機会を提供し、自身の研究内容と未来社会との繋がりについて新たな気付きを促すことを目的としています。今回は、ありたい「未来のライフ」をテーマに、DLabの描いた未来社会像「TRANSCHALLENGE(トランスチャレンジ)社会」が実現した社会を思い浮かべ、未来シナリオを頼りに具体的な未来の場面を描き、実現のために、どのような科学・技術,社会の仕組みが求められるかを自身の研究と絡め検討・抽出することで、俯瞰力、創造力、他者と協働する力の強化を目指しました。
大竹尚登基礎研究機構長から本ワークショップの趣旨説明をした後、DLabメンバーであり、研究・産学連携本部 研究戦略部門長の新田元上席URAから、DLabの概要と主な取り組み、ワークショップで使用する手法(現在の延長線上にない未来の姿を捉えるための「未来洞察」、ありたい未来像を基点に必要な技術を考える「バックキャスティング」)を紹介した上で、グループによる共同作業に入りました。
12名の塾生は4つのグループに分かれ、ワークの導入として自己紹介をし、チーム名と役割分担を決め、順を追って4つの課題に取り組みました。
第1の課題では、「TRANSCHALLENGE社会」を実現するうえで、大切になる、または興味がある未来シナリオカードをグループで選び、カードについて思ったことを付箋に書き出していきました。

続く、第2の課題では、書き出した付箋をKJ法(ケージェイ法:断片的な情報・アイデアを効率的に整理する目的で用いられる手法)を用いて分類し、自分たちが「ありたい」と思う未来テーマを設定していきます。分類に苦労する場面もみられましたが、ファシリテーターのアドバイスを受けながら、隠れているキーワードや、因果関係をさがし、まとまりを作っていきました。その後は、各グループが設定したテーマ「1人n役」「様々な制約が取り払われ自由に選択できる」「他人に自分の研究の魅力を説明しなくて良い社会」「理想の社会構築」を発表しました。
第3の課題は、課題2で掲げたテーマの「場所・時間・主人公」をランダムに与えられた条件に固定したうえで、「TRANSCHALLENGE社会」が実現したら、テーマで掲げた未来はどうなっているのか、具体的なストーリーを考えました。

ワークの仕上げとなる第4の課題では、描いた未来を実現するために、必要となる新たな科学技術、社会制度、価値観を、全員の研究を絡めて考え、最後に、各グループの代表が発表し、質疑応答・意見交換を行いました。はじめこそ緊張した面持ちだった塾生も、課題を進めていく中で和やかな雰囲気となり、質疑応答は若手研究者らしい鋭い内容で大いに盛り上がりました。そして、想定した未来は各グループ様々で、個性ある発表内容でした。例えば、AIを活用した未来の姿でも、テーマ「理想の社会構築」のグループは、『自分の思考を就寝中もAI経由でロボットに伝達し、たとえ宇宙でも仕事できる、働く未来』を発表しました。一方、「他人に自分の研究の魅力を説明しなくて良い社会」をテーマにしたグループは、『役に立つ仕事がいらない社会になっていて、労働から解放されている未来』を提案しました。

閉会時の大竹尚登機構長ご挨拶では、ディスカッションしている塾生の姿が眩しく、みんな研究が大好きだと感じたので、これからも大切にして欲しいとの話がありました。
本ワークショップで学んだ「未来を考える」視点が、今後の研究活動につながることを期待します。

2023-7-3
広域基礎研究塾「塾生向け講演会」開催

2023年7月3日17時00分~18時00分に、広域基礎研究塾では塾生向け講演会をオンライン開催し、塾生14名が参加しました。 今回は、本学と東京医科歯科大学との将来的な統合を見据えて、東京医科歯科大学 大島茂教授を講師にお招きしお話を伺いました。
講演前半では、東京医科歯科大学について理念、歴史、キャンパス、アカデミック、研究支援組織、代表的な研究まで多岐に渡りご紹介いただき、東京医科歯科大学を身近に感じる内容でした。アカデミックの話題では、高い科学的思考力を有する臨床医“Clinician Scientist”の育成が世界的に課題となっており、臨床の視点に立ち 基礎研究を実践する人材の重要性をお話いただきました。後半は、病気の発症原因の多くは遺伝因子と環境因子の組み合わせによる多因子疾患であることを説明後、大島先生の研究内容を紹介いただきました。最後に、両大学間で行っている共同研究マッチング取り組みにふれ、「新しい技術を使わないと病気は治らないので、異分野融合研究を進めていこう。」と熱い言葉があり、塾生にとって東京医科歯科大学の理解を深めるだけでなく、新大学にむけた交流促進を意識する良い機会となりました。
質疑応答
※「塾」は広域塾生からの質問、「大」は大島先生からのご意見

  • 塾:東京医科歯科大学と本学生命理工学院との研究内容の違いは?
  • 大:基本的に生体を扱っている点は一緒。ただ、見据えていえる最終的なアウトプットに違いがある。
  • 塾:現在の医学では“原因だけを排除する”ことができるのか?
  • 大:遺伝因子に関しては細胞モデル・動物モデルで検証をしている。遺伝疾患は原因となる1個の遺伝子を治すことで治療する研究が進んでいる。
  • 塾:共同研究をするなら、自身が若手なこともあり若手研究者だと声を掛けやすいと感じている。臨床をしている若手研究者の研究時間確保のサポートについて聞きたい。
  • 大:若手研究者の研究時間確保は課題であると認識しており、新大学での取り組みも考えている。現在でも各講座で医師になって5年目以降に研究に専念する期間を設ける取り組みをしている。
  • なお、本講演会開始前に、都合により研究分野紹介発表会(6月27日開催)に参加できなかった塾生1名が研究分野紹介を行い、先日同様オンラインでも活発な質疑を繰り広げました。

2023-6-27
広域基礎研究塾 2023年度第6期生 研究分野紹介発表会

2023年6月27日(火)10時00分~16時30分に、すずかけ台キャンパスS2棟第1・2会議室にて、広域基礎研究塾の2023年度6期生14名による研究分野紹介発表会を、開催しました。都合により参加できなかった塾生は後日発表予定です。
この発表会は、塾生が互いの研究内容を知り、コミュニケーションを深めることを目的としています。一人20分の持ち時間で各塾生が自分自身のこれまでの研究テーマについて専門分野以外の研究者に分かり易く約7分間で発表し、残りの時間で質疑応答する形式で実施しました。異分野交流に特有な課題として、発表者は自分自身の研究における興味やスタンスを専門外の相手に伝えることの難しさやもどかしさをどのように克服するのか、が挙げられます。また、聴衆は発表者の意図を理解しながら自分の意見を伝えるにはどのように発言すればいいのか、どのような角度から質問するのが適切なのかということにも配慮する必要があります。
参加者全員が積極的に質問を行い、質疑応答は100件を超える大変活発な会となり、上記課題についての貴重な体験を参加者全員で共有できたと思います。
また、同日に本学を訪れていた文部科学省研究振振興局学術研究推進課の田畑磨課長を含む4名の職員が視察に訪れ、塾生の発表に耳を傾けました。

2023-6-12
広域基礎研究塾 2023年度第6期生オリエンテーションを開催

広域基礎研究塾 2023年度第6期生オリエンテーションを開催しました。広域基礎研究塾は今年で5年目の研修会となります。昨年度までに研修会を受講した塾生は、計78名となり、本年度は第6期生15名の塾生を迎えます。
研修会の最初の行事となるオリエンテーションを、6月12日に大岡山キャンパス西9号館コラボレーションルームにて開催しました。ZOOMによる参加者1名を含む13名が参加し、会場参加者には入塾証が授与されました。ZOOMによる参加者ついては後日入塾証を渡しました。また都合により参加できなかった塾生にはオリエンテーションの概要説明を行なった後、入塾証を授与しました。

  • ・広域基礎研究塾スタッフの紹介
  • ・広域塾研修会の目的と活動内容(大竹機構長)
  • ・入塾証授与式(大竹広域基礎研究塾長)
  • ・塾生自己紹介
  • ・研修会日程,面談について(伊能副機構長)
  • ・研究ハラスメントと研究倫理(伊能副機構長)
  • ・誓約書の署名について(伊能副機構長)
  • ・研究発表用スライドについて(伊能副機構長)
  • ・質疑応答

オリエン風景集合写真


広域基礎研究塾の目的について(大竹尚登機構長):

東工大は指定国立大学法人に指定さていますが、初回採択時には2つの要因で選ばれませんでした。1つめは東工大の得意分野をうまく表現できていなかったこと、2つめは社会課題に向き合っているか問われたことです。1つめの課題に応えるために、東工大の強みとして3つの重点分野と3つの戦略分野を定めました。強い研究分野を伸ばすためには、個々の教員が尖った研究を行うだけでなく、他の研究分野を知ることが大切です。2つめの課題には未来社会デザイン機構を設置し、東工大の英知を集めて社会課題に向き合っています。
基礎研究機構は、大隅先生による「科学を一つの文化として認めてくれるようにならないか」「若い研究者をサポートできるようなシステムが出来ないか」という問いを受け、若手研究者が基礎研究に集中できる場として2018年に設置されました。
広域基礎研究塾での活動では、大隅先生を囲む会、研究分野が異なる塾生とのディスカッション、医科歯科大学教員による講演など、いくつも“気付きを得る“場面を用意しています。 自身の好奇心と“気付き”に基づいた研究を進めていけるよう、楽しみながら取り組んでほしいと思います。
また、基礎研究には時間とともに資金も必要となります。平成26年度の文部科学省の調査では、助教の場合に研究エフォートは6割と言われています。基礎研究機構では研究エフォート9割を目指し、基礎研究に没頭できる場を提供しています。資金面では新研究挑戦奨励金や、修了生も対象となる支援を実施しています。
これまでに研修会を受けた塾生は、修了後も継続して交流を続け、互いの得意分野を活かした異分野融合の共同研究で競争的資金獲得に向けて活動しているグループもあります。広域基礎研究塾での活動を通じて、今後の研究に臨むために大切な人的ネットワークを築いてください。

研究ハラスメントと研究倫理(伊能副機構長):

研究ハラスメントは、研究室で学生が教職員から受ける理不尽な行為として捉えられています。塾生の皆さんは少し前までは学生の立場でしたが、現在は教職員の立場としてハラスメントが起こらないよう心がける必要があります。その際、人により受け取り方が異なるので伝え方に工夫することが大切です。また、各種DXツールが発達しましたが、的確にコミュニュケーションを取るためにリアルな会話の確保を心がける必要があります。
研究倫理は、研究を円滑に実施するために必要な観点です。研究倫理は、研究実施前、研究実施中、そして実施後の各段階で確認すべき事項や遵守事項がいくつかあります。これらは時折、規則の変更がありますので、日頃からチェックしておくことをお勧めします。


2023-5-27
専門基礎研究塾 有機化学分野 第18回Interactive Seminar

2023年5月27日、第18回Interactive Seminarが行われました。
今回の話題提供者は、佐治木弘尚 教授(岐阜薬科大学)
発表題目:  "Developments in C–H Activation Based on Hydrogen Activation of Heterogeneous Catalysts ~Mainly Focusing on Deuterium Labeling Reactions~"

本セミナーでは、佐治木教授の長年の研究テーマに基づく種々の重水素化合物の合成法が紹介されました。触媒的 H-D 交換反応は重水素化化合物の調製法として用いられてきましたが、従来、高価な重水素源 (D2 や D2O など)を用い、高温高圧、強塩基性条件など過酷な条件を必要とする欠点がありました。これを克服するために、佐治木教授は、H2 雰囲気下、D2O 中で Pd/C を使用する H-D交換反応を確立しました。さらに、大気条件下での C-H 活性化に基づいて単純アルカンのH-D交換反応が可能になったことが紹介されました。
参加者18人、セミナーと質疑応答を楽しみました。

有機化学分野

2023-5-14
「基礎研究機構若手研究者による挑戦的研究のご紹介」実施報告

「すずかけサイエンスデイ2023」の講演会イベントとして、5月14日(日)に「基礎研究機構若手研究者による挑戦的研究のご紹介」を開催しました。すずかけサイエンスデイでの基礎研究機構関連イベントは、昨年に続き2回目となります。
すずかけ台キャンパス大学会館多目的ホールとオンライン配信のハイブリット形式で行われ、参加者数は79人(会場49人/オンライン30人)でした。
講演会は伊能教夫副機構長が司会進行を務め、大竹尚登機構長による基礎研究機構の説明に続き、若手研究者4名による講演を行いました。

  • 堀江 朋子 助教(細胞制御工学研究センター, 専門基礎研究塾所属) 
    「オートファジーの世界」
  • 織田 耕彦 助教 (物質理工学院 応用化学系, 広域基礎研究塾第5期生)
    「超臨界流体が切り拓くナノエンジニアリング」
  • 相川 洋平 助教 (科学技術創成研究院 未来産業技術研究所, 広域基礎研究塾第5期生)
    「光信号処理技術 ―光でうごくコンピュータをめざして―」
  • 大橋 匠 准教授 (環境・社会理工学院 融合理工学系, 広域基礎研究塾第4期生)
    「科学技術と社会をつなぐデザイン」

各講演とも工夫が凝らされ、研究内容紹介だけではなく、研究者とは何か、現在の研究テーマを選んだ経緯、研究が社会にどうつながるのか、基礎研究機構での活動がどう研究につながったのかなど、高校生にも分かりやすくかつ聞き応えのある内容でした。参加者の方にも、東京工業大学で行っている研究内容の幅広さや挑戦的研究の面白さを感じていただけたと思います。質疑応答も行われ盛況のうちに講演会は終了しました。

2023-5-1
「基礎研究機構若手研究者による挑戦的研究のご紹介」5/14開催

「すずかけサイエンスデイ2023」2023年5月14日(日)において、基礎研究機構の塾生4名が、今取り組んでいる挑戦的研究の内容と将来展望をわかりやすく説明します。

「基礎研究機構若手研究者による挑戦的研究のご紹介」
イベント日時:5月14日(日)10:00 - 11:30(9:30開場)
会場:すずかけ台キャンパス 大学会館 3階 多目的ホール、またはオンライン

概要:
基礎研究機構は、未来のアカデミアを支える基礎研究者を育成する場として、2018年10月に設置されました。本機構は、3つの専門基礎研究塾と、広域基礎研究塾から構成されています。専門基礎研究塾は、各専門分野の世界的研究者が塾長となって長期間塾生を鍛えるもので、現在細胞科学分野の大隅塾に15名、量子コンピューティング分野の西森塾に1名、有機化学分野の鈴木塾に3名の塾生が在籍しています。また、広域基礎研究塾では、全ての分野の若手研究者を対象として3か月間程度研究テーマを落ち着いて考える機会を設けており、これまでに78名の助教が入塾しています。 本講演会では、専門塾生(堀江朋子助教)、広域塾修了生(織田耕彦助教、相川洋平助教、大橋匠准教授)の4名が、今取り組んでいる挑戦的研究の内容と将来展望をわかりやすく説明します。

すずかけサイエンスデイ(SSD):講演会ページ

2023-4-10
海外研究機関への派遣支援事業「羽ばたけ!若手教職員プロジェクト」

基礎研究機構では、海外研究機関への派遣支援事業「羽ばたけ!若手教職員プロジェクト*」を立ち上げました。本派遣事業は、若手研究者を東工大ANNEX等の海外大学等研究機関へ派遣し、専門研究分野での研鑽を積み、多様な視点と異なる価値観を体得するとともに、自身の国際連携の基礎を構築することを促し、日本の将来を担う若手研究者を育成することを目的としております。
2022年度は専門基礎塾生、広域基礎研究塾生および修了生を対象とし、審査委員会による審査を経て派遣する若手教員を決定し、3ケ月から6ケ月の長期コース(3名)と、約1ケ月の短期コース(4名)の派遣支援を実施しました。
*職員については、本機構とは別予算で若手職員6名が本プロジェクトで沖縄科学技術大学院大学(OIST)に赴きました。

「羽ばたけ!若手教職員プロジェクト」日程表等(PDF)

2023-4-3
細胞科学分野新規入塾

2023年4月3日に基礎研究機構 専門基礎研究塾 細胞科学分野の入塾式を開催しました。 大竹尚登基礎研究機構長から基礎研究機構についての説明があり、大隅良典塾長から塾生への激励と入塾証の授与が行われました。

集合写真の左上から小谷哲也特任助教、大竹尚登機構長、柿原慧遵研究員、左下から武田英吾研究員、大隅良典塾長、Zhu Haojie研究員

2023-4-1
専門基礎研究塾 有機化学分野 第17回Interactive Seminar

2023年4月1日、第17回Interactive Seminarが行われました。
今回の話題提供者は、正田晋一郎(東北大学名誉教授)
発表題目:  "One Thing Leads To Another"

本セミナーでは、正田博士の長年にわたる研究テーマであるグリコシル化反応の話題が紹介されました。まず、オリゴ糖や多糖の生化学的意義を概観した後、糖質の合成化学の歴史的背景、そして同博士が開発したフッ化糖の化学、グリコシルオキサゾリンを用いた水中でのグリコシル化など、新たな方法が紹介されました。また、教科書を書き換えるような機構的知見が紹介されました。 参加者15人、セミナーと質疑応答を楽しみました。

有機化学分野

2023-3-22
基礎研究機構 2022年度成果報告会、塾生ポスター発表会、交流会

大竹機構長の挨拶

次世代の最先端科学技術を担う若手研究者を育成するために東京工業大学が2018年度に設立した基礎研究機構(大竹尚登機構長)の2022年度成果報告会を3月6日(月)午後に開催いたしました。
すずかけ台キャンパスS8棟レクチャーホールおよびオンライン配信のハイブリット形式で開催し、出席者総数は110名を越える催しとなりました。
大竹尚登機構長の司会進行により行われ、第一部では各塾の塾長による基礎研究塾の活動報告を、第二部では塾生による海外派遣プログラムの活動報告を行いました。

基礎研究塾報告

第一部は渡辺治理事・副学長から塾生への激励に次いで、オンラインでご参加いただいた文部科学省森晃憲研究振興局からご挨拶をいただきました。

渡辺理事・副学長の挨拶
文部科学省森局長の挨拶

3つの専門基礎研究塾から、大隅良典塾長(細胞科学分野)、西森秀稔塾長(量子コンピューティング分野)、鈴木啓介塾長(有機化学分野)による本年度の活動報告がありました。

専門基礎研究塾(細胞科学分野)の活動報告 大隅良典 塾長大隅良典塾長

大隅先生からは活動報告とあわせ若手への期待をお話しいただきました。

~若手への期待~

統合後の新しい大学は「東京科学大学(仮称)」という名称に相応しい“日本で1番研究しやすい大学“になることを期待している。
科学と技術は近年相互に強く依存しながら発展してきた。人類の未来には、科学と技術の健全な発展が必要。科学者の社会的な使命が改めて問われるなかで、科学には専門知と総合知が求められ、あらゆる分野との接点をもって研究を進める時代になっている。
次世代の研究者には、大きな目標を掲げ未知への挑戦をし、大学でしかできない研究を行い、長いスパンで研究を考えてほしい。また、5年前に立ち上げた「大隅基礎科学創成財団」の活動を通して、多くの方と関わり企業が何を求めているのか知ることができたので、多様な人との交流し広い視野を獲得し、未来の研究、大学の在り方についての広範な議論をしてほしい。

~活動報告~
    当専門塾の活動は以下の4つ。
  • 1. 談話会:シニア教員から若手にメッセージを提供。今期は2回実施(2022年6月に久堀徹教授、2023年1月に池田啓子特定講師)
  • 2. コロキウム:国内外の講師を招き、生物学に関する最先端の研究成果を紹介。今期は9回開催。
  • 3. 塾生研究費:研究費として有効活用。
  • 4. 共同実験室・共同利用機器:共同実験室の整備・拡大。

・塾生が順調に科研費を獲得しており、筆頭著者となった学術論文は23報採択されている。コロキウム活動は定着してきて、海外からの講師も増えているが、注目すべきは出席率が高く塾生の研究力向上につながっている点。
・毎年4~5名の塾生が新しい職をえて入れ替わっているのは喜ばしいこと。
・来年はさらに活動を盛り上げ、風通しを良くして若い人が活躍できる塾にしていく。

専門基礎研究塾(量子コンピューティング分野)の活動報告 西森秀稔 塾長
    当専門塾の活動は以下の2つ。
  • 1. 会議主催:国内外からの幅広い研究者により話題提供頂く。今期は2回開催。
  • 2. 塾生研究費:D-Wave量子コンピュータ使用料

研究分野が産業に直結しているので、企業との連携がしやすい田町地区へ2022年6月に移ったが、企業連携でさっそく効果が出始めている。
・学内外のメンバーを含めて多人数で活動しており、今期は塾生2名で活動。うち1名は12月に転出したが、短期間の間にアクティブに活動し論文3本という実績を残した。
・大学の支援もあり研究エフォートは高く、塾生も90%程度である。
・今期は対面での会議も主催。参加者120名のうち、企業参加率は6割と高い。
・来期は分野の特性と立地を生かして更に外部連携を進めたい。

専門基礎研究塾(有機化学分野) 鈴木啓介 塾長

当専門塾の活動は以下の2つ。
インタラクティブセミナ-:今期は国内外8名の講師によりオンライン講演会を開催。塾生研究費:塾生の消耗品購入や学会参加。
有機合成化学は難しいので、半学半教と思って活動に取り組んでいる。塾立上げ時からオンラインを活用しており、学外のアドバイザーと一緒に各月セミナーを実施している。様々な分子を扱っているので非常に勉強になる。当専門塾を寺子屋に見立て活動しているが、合成と解析を両輪とする有機合成化学のサロンとして機能させていく。
来期はオンライン研究室訪問を実施したい。

広域基礎研究塾の活動報告 初澤毅 塾長

広域基礎研究塾では3ヵ月の期間で、塾生の研究エフォートを上げて貰い、自分のテーマを深く考えることを目的としており、今期は13名の塾生が活動を行った。累計塾生は78名となり、様々な学院から満遍なく参加いただいている。
当広域塾の活動は以下のとおり。
1.オリエンテーション、2.個別面談、3.研究分野紹介発表会、4.大隅先生を囲む会、5.WS「未来社会と自身の研究との繋がりを考える」、6.研究テーマ設定発表会、7.「成果報告会」
・オリエンテーションでは、ハラスメントと研究倫理の話も行った。
・研究テーマ設定発表会では、それぞれの塾生が広域塾の活動を通して考案した新たな研究テーマを発表し、質問も多く活発な議論が行われた。
・「新研究挑戦奨励金」は本年も実施。塾生の提案と機構での審査を経て10件を採択し実施した。また、広域塾を修了した第1~4期生に対して、新たな研究の芽を継続的に育てることを目的とした「新研究展開奨励金」として支援を行い、15件を採択した。
・新たに若手研究者を東工大ANNEX(アーヘン、バークレー、バンコク)等の海外大学等研究機関へ派遣する経費を支援する取り組み「羽ばたけ!若手教職員PJ」を立ち上げ、長期コース3件と、短期コース4件の派遣支援を行った。

広域基礎研究塾の入塾効果の分析 伊能教夫副機構長

広域基礎研究塾創設から4年足らずだが、広域基礎研究塾で活動は塾生の刺激になったのか、現時点で追跡可能な指標をもとに、新しい研究テーマの取組を始めているのか、変化のきざしを調査した。
広域基礎研究塾の目的である「長期的視点に立つ新しい研究テーマ設定」「異なる分野の研究者とのネットワーク形成」に焦点を絞り、第1・2期生を対象に広域塾修了後の研究発表、科学研究費の採択状況、異分野の研究者との連携を調査した。
研修効果の視覚化するため、研究の進展度を3段階で数値化し、研究実施の難易度を3つに分類。難易度別に順調に研究が進展していることが伺えた。
また、塾生と塾生以外(研究対象の塾生と年齢、本学助教採用時期および専門分野ができるだけ同じになるように抽出)で、2020年度2021年度の新採択の科研費研究テーマを比較すると、塾生は挑戦的研究の割合が20%程高い調査結果となり、現段階では、半定量的な分析方法ではあるが、塾生は独自の新研究テーマに挑戦している姿勢が伺える。また、異分野の研究者)協働して研究を展開する動きも見られることから、今後の展開が大いに期待される。

海外派遣報告

第二部では、大竹尚登機構長から本年度に立ち上げた「羽ばたけ!若手教職員PJ」を紹介したのち、同プログラムにより海外の大学・研究機関に派遣された4名の塾生(長期2名、短期2名)による活動報告を行いました。

---麻生 尚文 塾生(広域基礎研究塾2期生) 長期派遣
 東京工業大学理学院地球惑星科学系地球惑星科学コース・助教

派遣先:UC Berkeley、 アメリカ地質調査所 他
派遣による成果:連日議論を行い、考え方や将来のプランを相談できた。研究についてゆっくり考える機会を得られただけでなく、自分の研究分野以外のことも考えることができた。
来年度の参加を考える教員に向けて:若手の良い経験になるのでぜひ行ってほしい。

---倉元 昭季 塾生(広域基礎研究塾4期生) 長期派遣
 東京工業大学工学院システム制御系システム制御コース・助教

派遣先:ミュンヘン工科大学、アーヘン工科大学
派遣による成果:3か月では思っていたことはできなかったが、今後の研究方針を検討でき、さらにディスカッションを重ねるうちに共鳴する研究テーマが生まれ、今後共同研究を目指すことになった。
来年度の参加を考える教員に向けて:ミーティングだけでなく隙間時間にも議論でき、直接会うことで関係性を深められる。1つの組織に多数の研究者が在籍しているので、多様な視点の意見を得やすい。

---三木 卓幸 塾生(広域基礎研究塾1期生) 短期派遣
 東京工業大学生命理工学院生命理工学系生命理工学コース・助教

派遣先:GR Conference、 Syracuse Univ、 UC Berkeley
派遣による成果:朝から晩まで討論し、フリータイムでは研究者と交流を行った。1流の研究者との写真を研究室に飾ることで、研究室メンバーが自分達の研究内容に自信をもてるようになり良い影響が生まれた。新たな研究課題をみつけ、本格的な共同研究テーマへつながりそう。
来年度の参加を考える教員に向けて:ラボの活力を上げるには、 教員のアクティビティを上げ、 世界のトップランナーであることを内外で示す必要があるが、研究費は研究に使いたので「羽ばたけ!若手教職員PJ」は必要なサポート。

---田島 真吾 塾生(広域基礎研究塾3期生) 短期派遣
 東京工業大学科学技術創成研究院未来産業技術研究所・助教

派遣先:オレゴン州立大学、ASPE
派遣による成果:共同実験を実施し、実機検証にて有用性を確認できたので、ジャーナル論文に投稿し査読中。新たな共同研究計画の創出ができ、来年度より開始予定。
来年度の参加を考える教員に向けて:国際的なつながりが、自分の分野以外の方とも構築できた。普段とは違う環境に身を置くことで、ゆっくりと研究のことを集中して考えることで新たな研究の視点が得られた。


麻生 尚文 助教

倉元 昭季 助教

三木 卓幸 助教

田島 真吾 助教

佐藤 勲理事・副学長

大竹尚登機構長による閉会の辞では、研究者への評価に触れ、会場でご出席いただいた佐藤 勲統括理事・副学長および小倉康嗣監事からもコメントをいただきました。

組織としてはどうしても評価が必要であるので、評価軸に対して評価するが、(成果のみではなく)「どれくらい意気込みをもってチャレンジし、インパクトがあることをやろうとしているか」を評価したい。また、評価の趣旨に沿って内容を検討し、文章の組み立てができる“プレゼンテーション力”が重要。

小倉康嗣監事

基本的には研究内容が良い事が一番の成果となるが、それを見極めるのは研究者なので、研究者がいかに優れているかどうかで研究成果、評価が変わってしまう。
基礎研究は大事だが、研究経費獲得のためには、研究力はもちろんのこと、自分が何を考え、何をやりたいか、自分の想いがどこにあるのかを、申請書に反映させ研究経費獲得につなげるプレゼンテーション力が必要になる。

質疑応答も活発に行われ、成果報告会を盛況のうちに終えることができました。

ポスター発表会・交流会

成果報告会終了後に、すずかけ台キャンパスS1棟105号室にて専門基礎研究塾・広域基礎研究塾第5期生全員と、広域基礎研究塾OB・OGである第1~4期生の有志によるポスター発表会を開催しました。その後、会場を移して3年ぶりに交流会を行いました。
ポスター発表会では、60名を超す参加者が、発表ポスター40件を前に熱心な討論を繰り広げました。また、ポスター会場には文部科学省より若手職員が視察に訪れ、塾生と今後の文科省の施策等に関する意見交換を行いました。
交流会では、新型コロナウィルス感染対策に配慮しつつ、今後の基礎研究機構の展開や本学の将来について意見を交わしました。

2023-3-6
基礎研究機構 広域基礎研究塾セミナー

基礎研究機構は、国内外においてトップレベルで活躍できる次世代の研究者を育成・輩出するための活動の一環として、2023年3月6日(月)午前に「広域基礎研究塾セミナー」を、すずかけ台キャンパスS8棟レクチャーホールおよびオンライン配信のハイブリット形式で開催いたしました。

大竹先生の挨拶

本年度は、聴講対象者として、基礎研究機構塾生のみではなく、高度人材育成プログラムに叙属する大学院博士課程学生をはじめとした学内者に拡大し、東京工業大学 益一哉学長 と 東京医科歯科大学 宮原裕二統合研究機構副機構長 / 若手研究者支援センター長をお招きし、『次代を担う若手研究者に期待』と題して講演いただきました。

同セミナーは、大竹尚登機構長による開会の辞で始まり、広域基礎研究塾の伊能教夫副機構長の司会により進行され、参加者数は90名を超え、各講演者の後には活発な質疑応答もあり、盛況な催しとなりました。

講演1.東京工業大学 益一哉学長

益学長は本学大学院博士課程(電子工学専攻)を修了後、東北大学助教授などを経て、本学教授へ昇任。2018年からは学長として本学をリードし、東京医科歯科大学との統合、入試での女子枠導入等、大きな決断と挑戦を続けておられます。 今回はご自身の専門分野である集積回路の紹介のなかで、研究者として基礎に立ち戻り電気磁気学を学び直したご経験や、基本に立ち戻る事の重要性をお話いただきました。 続いて、学長の立場から、個々の研究者が「志」をもち、大学が研究に専念できる「環境」を提供し、「余裕」を生む出すことができれば、おのずと研究成果は上がっていくので、経営改革を含めこれからも挑戦していくことをお話しいただき「戦いに挑まずして、勝ちはない」と若手研究者にむけた熱い想いが伝わる講演でした。

講演2.東京医科歯科大学 宮原裕二統合研究機構副機構長/若手研究者支援センター長

宮原先生は、本学博士課程修了後、日立製作所中央研究所へ入社し、産官学の道を経て、東京医科歯科大学生体材料工学研究所所長を歴任され、現在は同大学 統合研究機構副機構長/若手研究者支援センター長としてご活躍されています。ご専門は生体医工学、ナノ材料科学です。
企業で製品化にも携わった経験から開発の経緯を交え専門分野のご紹介をいただきました。
ノーベル賞に至る重要な研究を行った平均年齢は30代が多く、研究着手はもっと早い時期であること、幕末-明治維新で活躍した若き志士たちが、生命の危険を冒してでも自分で考え行動したことを例にあげ、新しい時代を切り開いてきたのは20-30代の若者である。若手研究者が集まり、刺激しあい、良き友人を得て、30年40年とかかるスケールの大きな研究に是非取り組んでほしいと、若手研究者を啓発いただきました。

最後に初澤毅広域専門塾長より閉会の挨拶があり、盛況のうちに広域基礎研究塾セミナーは終了しました。

質疑応答の様子
初澤毅広域専門塾長の挨拶

2023-2-24
専門基礎研究塾 有機化学分野 第16回Interactive Seminar

2023年2月18日、第16回Interactive Seminarが行われました。
話題提供者:Marcus A. Tius(ハワイ大学教授)
発表題目:  "One Thing Leads To Another"

本セミナーでは、Tius博士が長年研究して来られたNazarov反応に関する最近の進歩として、不斉合成への展開が紹介されました。このペリ環状反応は多置換シクロペンタンをジアステレオ選択的に与えるユニークな方法として重用されてきましたが、エナンチオ選択的反応に展開することは長らく困難とされていました。しかし、同博士は優れた洞察力により、不斉合成への展開の鍵は中間に存在するペンタジエニルカチオン活性種の回転選択性の制御にあると看破し、その手立てとして(1)光学活性なプロトン酸触媒、(2)有機触媒、(3)遷移金属触媒を用いる反応を検討することにより好結果を得たことを紹介されました。
参加者15人、セミナーと質疑応答を楽しみました。

有機化学分野

2023-2-6
基礎研究機構成果報告会および若手研究者向けセミナー(3/6)のお知らせ

基礎研究機構成果報告会のお知らせ

今年度の成果報告会は、会場聴講とオンライン聴講のハイブリッド形式で開催いたします。
 開催日時:2023年3月6日(月)13:15~15:45
 会場:東工大すずかけ台キャンパス S8棟 レクチャーホール
たくさんの方々のご参加をお待ちしております。 詳細は、こちら「基礎研究機構 成果報告会」をご覧ください。

若手研究者向けセミナーのお知らせ(学内者限定)

2023年3月6日(月)に、学内者限定にて広域基礎研究塾(若手研究者向け)セミナーを会場聴講とオンライン聴講のハイブリッド形式で開催いたします。 詳細は、こちら「若手研究者向けセミナー」をご覧ください。(学内アクセス限定)

2023-1-27
細胞科学分野の丹羽達也助教らの研究内容が、東工大ニュースに掲載

専門基礎研究塾 細胞科学分野の丹羽達也助教らの研究内容が、東工大ニュースに掲載されました。

東工大ニュース:タンパク質合成過程での中断リスク「リボソームの不安定化」は、原核生物と同様に真核生物でも見られることを発見
遺伝情報をもとにさまざまなタンパク質を合成する「翻訳」の際、負電荷アミノ酸に富んだアミノ酸配列の翻訳時には、翻訳の連続性が破綻してしまう「リボソームの不安定化」現象が、原核生物だけでなく出芽酵母をはじめとした真核生物でも発生していることを明らかにした。
本研究成果は、欧州Nature Portfolioが発行する総合誌「Nature Communications」のオンライン速報版で2022年12月2日に公開された。
詳細は、東工大ニュースをご覧ください。

2023-1-20
専門基礎研究塾 第9回大隅塾談話会を開催

2023年1月19日に、専門基礎研究塾 細胞科学分野では、以下の談話会を開催致しました。

第9回大隅塾談話会

話題提供:池田 啓子 科学技術創成研究院 特定講師, 昭和大学歯学部 客員教授, 女子栄養大学栄養科学研究所 客員教授, メドアグリクリニックふじさわ 院長
話題:  "モデル動物を用いて疾患の病態生理に迫る"

今回、池田啓子先生に、「モデル動物を用いて疾患の病態生理に迫る」というタイトルでお話しいただきました。池田先生は海外留学先でナトリウムポンプの研究テーマに出会い、その後、ナトリウムポンプが関与する呼吸中枢のニューロンネットワークの解明に取り組みました。長年の研究の結果、二酸化炭素センサーとして機能するニューロングループpFRGを同定するなど、ネットワークの理解に大きく貢献されました。一方、ナトリウムポンプの変異に関連する神経疾患を調べるため、ノックアウトマウスを用いた研究も精力的に進めました。その結果、ナトリウムポンプサブユニットATP1A3が小脳の長期抑制やグルタミン酸取り込みに重要であること、別のサブユニットATP1A2は経腟分娩が脳機能に及ぼす影響を仲介していること、ナトリウムポンプ関連疾患の症状発現にアスコルビン酸が関与することなどを明らかにされています。さらに、ナトリウムポンプの遺伝子発現制御を調べる過程で、転写因子SIX1が嗅上皮のパイオニアニューロンの分化に重要であることを発見されました。

「文字通り“マウスと共に生きる”生活での気づきが、研究の駆動力になった」、「私の研究はまるで細胞内のマイクロチューブのよう。いろいろな方向にダイナミックに研究を進めてきた」と池田先生は言います。また、研究ポスト探しについては、“お見合い“と同じで相手を気に入り気に入られなければ成立しないとアドバイスをいただきました。さらに、医師として高齢者医療問題についてもお話しいただき、幅広い話題で大いに盛り上がりました。

2023-1-17
専門基礎研究塾 有機化学分野 第15回Interactive Seminar

2022年12月10日、第15回Interactive Seminarが行われました。
有機化学分野 話題提供者: 石橋正己(千葉大学大学院薬学研究院教授)
発表題目:  "Learning from natural products: Screening study on pathogenic actinomycetes Nocardia sp."

石橋博士が長年研究して来られた生物活性天然物のスクリーニング研究の中から、近年取り組んでいる病原性Nocardia属放線菌からの天然物の探索について紹介されました。とくに周囲の環境からの刺激によって通常では産生されない化合物が産生されることを期待して、Nocardia属放線菌と動物細胞との共培養という方法を取り入れ、新規環状ペプチドや亜鉛含有複素環化合物等を単離・構造決定し、生物活性を調べた例が紹介されました。参加者11人、セミナーと質疑応答を楽しみました。

2022-12-23
細胞科学分野の河野洋平研究員らの研究内容が、東工大ニュースに掲載

専門基礎研究塾 細胞科学分野の河野洋平研究員らの研究内容が、東工大ニュースに掲載されました。

東工大ニュース:細胞内で破壊された核膜の修復機構におけるラミン分子の役割を解明
東京工業大学 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センターおよびWorld Research Hub Initiative(WRHI)の木村宏教授、志見剛特任准教授、河野洋平研究員、ノースウエスタン大学(米国)のロバート・ゴールドマン教授およびチューリッヒ大学(スイス)のオハッド・メダリア教授らの国際共同研究グループは、動物細胞の核膜に存在する核ラミンが持つ、破壊された細胞核膜の修復機構における役割について詳しく解析した。
本研究では、顕微鏡によるレーザー微小照射を用いて任意の細胞の核膜の一部を破壊し、核膜が破壊された直後に、破壊部位にラミンCのみが迅速に集積していることを明らかにした。また、この集積にはラミンCが核内に豊富に存在していることと、免疫グロブリン様(Ig-fold)ドメインを介したBAF(Barrier-to-Autointegration Factor)との結合が必要であることなどを見いだした。
この成果は、ラミンの生理的機能の解明だけでなく、ラミン遺伝子の変異を原因とする早老症、心筋症、筋ジストロフィーなどの細胞レベルでの分子病態解明につながると期待される。
本研究成果は米国時間の10月27日付で米国科学誌「Journal of Cell Biology」に掲載されました。
詳細は、東工大ニュースをご覧ください。

2022-11-30
広域基礎研究塾 2022年度第5期生 研究テーマ設定発表会

2022年11月21日10時00分~16時30分に大岡山キャンパス本館第2会議室にて、広域基礎研究塾の2022年度5期生13名による研究テーマ設定発表会を開催しました。この発表会は、これまでの広域基礎研究塾の活動を通じて得た体験も踏まえ、研究エフォート率を高めた状態で熟慮した自分自身の研究構想を語るイベントです。各塾生は専門分野以外の研究者にも分かり易く10分間で発表し、続く10分間で質疑応答する形式を取りました。実施にあたっては、事情により会場で発表できない塾生はオンライン会議を使用し発表を行いました。

発表会全景

塾生の多くは「研究分野紹介発表会」で得た他の塾生の研究から着想を得た内容、「未来社会と自身の研究との繋がりを考えるワークショップ」で取り組んだ、未来社会シナリオ実現を据えたテーマ、「大隅先生を囲む会」で伺った大隅先生のメッセージ『とりあえず真っ向勝負』に端を発する切り口等、広域基礎研究塾の活動から得た気付きを発展させた研究構想を発表しました。発表後の質疑は50件を超え、互いの発表から刺激を受けている様子が感じとられました。また、自身の研究にいかせるアイディアを募った塾生に対し、自分の専門分野で応用できそうなアイディアを共有する場面もあり、異分野融合研究の可能性を感じる場となりました。今後、それぞれの塾生の研究構想が、各々の専門分野の先輩・同僚との議論を通じて更にブラッシュアップされ、様々な協力者との連携を経て結実することを大いに期待します。本発表会の終了後には、修了証授与式を執り行いました。

修了証授与
なお、広域基礎研究塾では2020・2021年度に続き、本年度も新研究挑戦奨励金の募集を開始しました。本奨励金は塾生が新たに設定した研究テーマへの挑戦を支援するために創設されたものです。塾生全員に広域基礎研究塾の活動の中で練り上げた挑戦的な研究テーマ提案を期待しています。また、今年度限定の取り組みとして広域塾を終了した第1~4期生に対しても支援を実施します。新研究挑戦奨励金は広域基礎研究塾の担当教員による審査を経て11月中に採択課題を決定し、12月に研究費が支給される予定です。

2022-11-16
広域基礎研究塾 2022年度第5期生 ワークショップ「未来社会と自身の研究との繋がりを考える」

2022年10月26日13時30分~17時00分に、大岡山キャンパス百年記念館4階にて、広域基礎研究塾の第5期生への本ワークショップを、基礎研究機構(OFR)と本学の未来社会DESIGN機構(DLab)との共催で行いました。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、2020年、2021年はオンライン開催でしたが、2年ぶりの対面開催となりました。
本ワークショップは、塾生個々の研究を俯瞰的に見つめ直す機会を提供し、自身の研究内容と未来社会との繋がりについて新たな気付きを促すことを目的としています。 今回は、自分たちが描くありたい「未来の社会(産業・学術)」を実現するために、DLabの描いた未来社会像「TRANSCHALLENGE社会」が実現した世界や未来シナリオを頼りに具体的な未来を描き、どのような科学・技術、社会の仕組みが求められるかを検討・抽出することを通じて、俯瞰力、創造力、他者と協働する力を養成することを企図しました。
大竹基礎研究機構長からの本ワークショップの趣旨のご説明後に、DLabの新田上席URAから今回のワークショップで使う手法として、現在の延長線上にない未来の姿を捉えるための「未来洞察」や、ありたい未来像を基点に必要な技術を考える「バックキャスティング」などの手法について解説があった後、具体的な作業に入りました。

新田上席URAの解説

14名の塾生(5期生12名、過去のワークショップに参加できなかった3期生1名、4期生1名)は3つのグループに分かれ、グループ内アイスブレイクとして、氏名、所属、研究内容、「今年の夏の一番の思い出」を一人1分間で自己紹介しました。
グループワーク最初の作業として、「TRANSCHALLENGE社会」を実現するうえで、大切になる、または興味がある未来シナリオカードをグループで選んだのち、未来社会の姿や新たな産業の傾向について一人5つ程度提案し、グループ内で共有・意見交換をしました。 選んだ未来シナリオに対して、笑い声も交えた活発な意見が飛び交い、なごやかな雰囲気のもと議論が進んでいきました。その後、各グループの代表が選んだ未来シナリオと選択理由を発表し全員に共有しました。

グループ内アイスブレイクグループ内意見交換

次のグループワークでは、KJ法を用いて各自の提案を分類し、自分たちが「ありたい」と思う未来を1つに絞りテーマを設定しました。 分類に苦労する場面もみられましたが、新田上席URAや、DLabの大木URAのアドバイスを受けながら、隠れているキーワードや、因果関係をさがし、まとまりを作っていきました。
次いで、「TRANSCHALLENGE社会」が実現したらテーマで掲げた未来はどうなっているのか、具体的なストーリーを考え、描いた未来の場面を実現するためには何が必要となるかディスカッションを行い、ありたい未来を実現するために、必要となる新たな科学技術、社会制度、価値観を、全員の研究を絡めて考えました。最後に、各グループの代表がテーマの詳細について発表し、質疑応答・意見交換を行いました。はじめこそ緊張した面持ちだった塾生も、ディスカッションが進行するにつれ、なごやかな雰囲気を形成しつつ、若手研究者らしい鋭い質疑応答となりました。なお、3グループのうち1グループはワークショップ中の議論も質疑応答も英語で行いました。

グループの発表

閉会時の伊能副機構長ご挨拶では、オンラインと対面の大きな違いとしてディスカッション中に笑いがあったことに触れ、対面でやることのコミュニケーションの強さを感じたとのお話がありました。コロナ禍により今回もワークショップ終了後の交流会は見送りましたが、対面での学びや、交流を通じて得られるものは大きいので、主催者としては次回ワークショップ時には交流会も開催できればと考える次第です。

2022-11-9
専門基礎研究塾 有機化学分野 第14回Interactive Seminar

2022年10月29日、第14回Interactive Seminarが行われました。
話題提供者: 後藤 敬 教授(東京工業大学)
発表題目:  "Modeling of Cysteine- and Selenocysteine-derived Reactive Intermediates Utilizing a Molecular Cradle"

レドックス制御や信号伝達において重要な役割を果たすシステインやセレノシステイン由来の反応中間体には、非常に不安定であるためにモデル研究すら困難なものが多くあります。本セミナーでは、後藤博士らが開発したクレードル型有機分子の内部空間を用いて活性中間体を安定化し、これまで仮説として提唱されていながら実験的根拠が乏しかった生体反応過程を実験的に検証する研究が紹介されました。14人が参加し、セミナーと質疑応答を楽しみました。

有機化学分野

2022-10-26
広域基礎研究塾 2022年度「大隅先生を囲む会」

2022年10月20日15:30~17:30に、広域基礎研究塾では「大隅先生を囲む会」を開催致しました。この会の目的は、世界的に著名な研究者から、ご自身の半生や研究ヒストリー、若手研究者への想い等、普段聞くことが出来ない話題をご提供頂き、聴衆となる若手研究者は、講演や質疑応答の中から自分自身の発想のヒントや研究への活力を得ると共に、キャリアパス構築に役立てることを目指すことにあります。
2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞された大隅良典栄誉教授をお招きし、ご講演頂きました。本年度塾生から9名と、昨年度参加出来なかった塾生1名の合計10名が参加しました。コロナウイルス感染対策のため、十分な間隔で並べた座席に参加者はマスク着用の上で着席して本会に臨みました。
大隅先生からは、助手時代の研究の転換期とその背景、研究室を主催した後の新たな研究「オートファジー」への取組み、ノーベル賞受賞に至る多くの共同研究者との関係などに加えて、基礎研究の重要性、日本の研究者が置かれている状況、若手研究者への期待など、多岐に渡る貴重なメッセージを頂戴しました。
今回は、科学技術創成研究院業務推進課課長の田中陽子氏と学務部教務課課長の堤田直子氏もご参加いただき、お二人から広域塾活動への研究および教育面での連携を強めたいとのご挨拶も頂戴しました。
今年も大隅先生から塾生と意見交換の時間をとりたいというご提案で、自由討論の形で質疑応答が行われました。参加した塾生全員がそれぞれの悩みや疑問を質問しましたが、その1つ1つに大隅先生が丁寧にご回答されていたのが印象に残りました。今回はご講演後、3年ぶりに着座形式で交流会を開催することができました。交流会でも塾生達が大隅先生を囲む形で車座になってお話に聞き入り、塾生達にとって大変貴重な時間となりました。

塾生と大隅先生の質疑応答の一部を以下にご紹介します。なお、「大」は大隅先生からのご意見、「塾」は広域塾生からの発言です。

  • 大:海外大学に訪問すると多彩なバックグラウンドを持つ学生とフリーにディスカッションする機会を持てるが、日本の大学ではそうした機会は少ない。広域塾生の皆さんは多彩な専門分野で活躍しており、これほど広汎な異分野交流が実現する機会は希有である。自分が若手研究者の頃は、修士課程は博士課程に進む前段階と位置付けていた。現在は、博士学生の人数が減ってしまい、研究室でのノウハウ蓄積が困難になっている。博士の重要性を社会がもっと認識しないと大学院の質低下が懸念される。
  • 塾:研究テーマを選ぶ際に何を大事にしたいか?また研究する上での心構えについて教えてほしい。
  • 大:昔は人がやっている研究テーマは避ける気風があったが、奇をてらった研究を勧めているわけではない。どこで出会いがあるかわからないので、自分のやりたいこと、立ち位置を考えながら研究を続ければよいのではないか。臨機応変に問題解決できる研究者もいるが、自分の人生とともに研究を行っていくことも魅力的ではないだろうか。
  • 塾:日本の基礎研究が停滞している要因は何か?
  • 大:研究に関する国の政策決定に学位を持つ専門家の意見をリスペクトする状況になっていないことが挙げられる。むしろ企業の方が基礎研究を行わないと将来がないという意識を持っている。
  • 塾:研究は一種の消費活動だと思う。基礎研究の価値を一般の人に知ってもらうことについてどう思うか?
  • 大:科学には文化としても側面がある。スウェーデンはノーベル賞の活動で100年の歴史があるためか、科学を楽しむ文化が根付いている。いろいろな人がサイエンスについて語り、一般の人に理解できるように語る必要があると思う。
  • 塾:数学という学問についてどう思うか?
  • 大:自然科学の中で重要な学問分野と思っている。個人的に理解できない点もあるが、数学の持つ論理の世界は大事だと思う。社会に役に立つ数学も必要ではあるが、研究として役に立つ方向性を考える必要はない。数学の歴史的発展に貢献することが重要と思う。

講演風景講演会後の交流会 集合写真
(注意喚起をしたうえでマスクを外して撮影しています)


2022-10-24
広域基礎研究塾 2022年度第5期生 研究分野紹介発表会

2022年10月13日13時40分~16時30分と10月14日 10時00分~12時35分の二日にわたって、広域基礎研究塾の2022年度5期生13名による研究分野紹介発表会を、大岡山キャンパス 本館第2会議室で開催しました。この発表会は、塾生が互いの研究内容を知り、コミュニケーションを深めることを目的としています。一人20分の持ち時間で各塾生が自分自身のこれまでの研究テーマについて専門分野以外の研究者に分かり易く約7分間で発表し、残りの時間で質疑応答する形式で実施しました。異分野交流に特有な課題として、発表者は自分自身の研究における興味やスタンスを専門外の相手に伝えることの難しさやもどかしさをどのように克服するのか、が挙げられます。また、聴衆は発表者の意図を理解しながら自分の意見を伝えるにはどのように発言すればいいのか、どのような角度から質問するのが適切なのかということにも配慮する必要があります。このイベントでは、参加者全員が質問に立ち、合計80件の質疑応答が活発に繰り広げられ、上記課題についての貴重な体験を参加者全員で共有できたと思います。

第5期生研究分野紹介発表会

2022-10-20
広域基礎研究塾 2022年度第5期生オリエンテーションを開催しました

広域基礎研究塾は今年で4年目の研修会となります。昨年度までに研修会を受講した塾生は、計65名となり、本年度は第5期生13名の塾生を迎えます。研修会の最初の行事となるオリエンテーションは、9月30日に大岡山キャンパス西9号館コラボレーションルームにて開催しました。塾生はZOOMによる参加者3名を含む12名が参加し、会場参加者には入塾証が授与されました。ZOOMによる参加者ついては後日入塾証を渡しました。また都合により参加できなかった塾生にはオリエンテーションの概要説明を行なった後、入塾証を授与しました。
当日の式次第は以下の通りで、今年から研究ハラスメントと研究倫理についての項目が新たに追加されました。

  • ・広域基礎研究塾スタッフの自己紹介
  • ・広域塾の目的と活動内容 (大竹機構長,初澤広域塾長)
  • ・入塾証授与式(初澤広域塾長)
  • ・塾生自己紹介
  • ・研修会の日程,面談について(初澤広域塾長)
  • ・研究ハラスメントについて(初澤広域塾長)
  • ・研究倫理について(伊能副機構長)
  • ・誓約書の署名について(初澤広域塾長)
  • ・研究発表用スライドについて(伊能副機構長)
  • ・質疑応答

第5期生オリエンテーション第5期生オリエンテーション集合写真
(注意喚起をしたうえでマスクを外して撮影しています)

大竹機構長による広域塾の目的について:

東工大が皆さんに何を求めて基礎研究塾を設置したのか、なぜ皆さんに入塾してもらったのかについて説明したいと思います。東工大は指定国立大学法人に指定され、教育・研究・社会貢献の中核大学としての責任を果たしていくことになりました。研究については、ガバナンスを強化し、外部から研究資金を導入し、基礎研究に還元していくのが東工大の基本的な構想としています。また、東工大の強みとして3つの重点分野と3つの戦略分野を設けて取り進めていくことや、社会とのつながりの中で科学技術のファシリテーターとして未来社会デザイン機構を設置することも大切です。これらの構想の一環として、本学は世界の第一線で活躍する基礎研究者を育成するための基礎研究機構を設置しました。
平成26年度の文部科学省の調査では、助教の場合に研究エフォートは6割と言われています。専門基礎研究塾ではこれを9割にするため、人、資金、スペース等のリソースを投じて、基礎研究に没頭できるようにしようとしています。また、広域基礎研究塾でも3カ月間ではありますが、やはり研究エフォートを9割に上げ、今後の研究テーマを真摯に考えてもらいたいと考えています。そのため、広域塾の活動は必要最小限に絞り、皆さんの時間をあまり縛らないこととしました。その一方で、限られた広域塾の活動にはしっかり参加して欲しいと思っています。
ここで、入塾期間中の活動として最も重要なことを2つ述べたいと思います。第一に、10年先を見据えた自分自身の研究テーマについて十分に時間をかけて練り上げ、研究テーマ設定発表会でその一端を発表することです。第二に、今後の研究に臨むために大切な人的ネットワークを築いていくことです。
これまでに研修会を受けた塾生は、修了後も継続して交流会を開催するだけでなく、互いの得意分野を活かした異分野融合の共同研究を開始し、競争的資金獲得に向けて活動しているグループも既に複数生まれています。若手研究者育成の観点から、論文数等も継続調査の対象にはしますが、より重要なこととしてチャレンジングな研究に立ち向かう姿勢が必要と考え、異分野への挑戦や異分野融合を形にしていく行動を評価したいと考えています。
この3カ月の間が、塾生の皆さんにとって将来の研究テーマを考える貴重な秋になるよう、皆さんを支え、共に楽しく過ごして行きたいと考えています。広域基礎研究塾の塾生としての誇りをもち、研鑽に励んでください。

研究ハラスメントについて(初澤広域塾長より説明):

研究ハラスメントは、研究室で学生が教職員から受ける理不尽な行為として捉えられています。塾生の皆さんは少し前までは学生の立場でしたが、現在は教職員の立場としてハラスメントが起こらないよう心がける必要があります。その際、人により受け取り方が異なるので伝え方に工夫することが大切です。また、コロナ禍により各種DXツールによる連絡が増えていますが、的確にコミュニュケーションを取るためにリアルな会話の確保を心がける必要があります。

研究倫理について(伊能福機構長より説明):

ここでは塾生の皆さんが研究を円滑に実施するという観点から研究倫理に関する注意事項を紹介したいと思います。研究実施前、研究実施中、そして実施後の各段階で確認すべき事項や遵守事項がいくつかありますので、一枚の資料にまとめてみました。これらは時折、規則の変更がありますので、日頃からチェックしておくことをお勧めします。


2022-10-20
専門基礎研究塾 有機化学分野 第13回Interactive Seminar

2022年9月24日、第13回Interactive Seminarが行われました。
今回の話題提供者は、千田憲孝(慶應義塾大学名誉教授)
発表題目:  "Synthetic Studies on Bioactive Natural Alkaloids based on Sigmatropic Reactions"

本セミナーでは、千田博士が長年研究して来られたシグマトロピー反応を連続的に行うことにより、複数の不斉中心を一挙に転写する方法論が紹介されました。すなわち、隣接位にC=C二重結合を有する1,2ジオールに対し、[3.3]シグマトロピー反応(Overman転位やClaisen 転位)を連続して行うことにより、立体特異的に鎖状化合物が形成されること、さらにそれらを活かして複雑な構造を有するアルカロイドの全合成を達成した例が紹介されました。参加者15人、セミナーと質疑応答を楽しみました。

有機化学分野

2022-9-16
量子コンピューティング分野の西森秀稔特任教授らの研究内容が東工大ニュースに掲載

東工大ニュースに「理想的な大規模量子シミュレーションに成功」が掲載されました。
量子コンピューティング分野の西森秀稔特任教授らの研究チームは、D-Wave社の量子アニーリング装置を用いて物質中の欠陥の分布をシミュレートし、ノイズのない理想的な環境下での量子相転移の理論とほぼ完全に一致する結果を得ることに成功した。

2022-9-15
細胞科学分野新規入塾

2022年9月15日に基礎研究機構 専門基礎研究塾 細胞科学分野の入塾式を開催しました。 大竹尚登基礎研究機構長から基礎研究機構についての説明があり、大隅良典塾長から塾生への激励と入塾証の授与が行われました。
左から大隅良典塾長、大江由佳子研究員、大竹尚登機構長(注意喚起をしたうえでマスクを外して撮影しています)

2022-7-23
専門基礎研究塾 有機化学分野 第12回Interactive Seminar

2022年7月23日、第12回Interactive Seminarが行われました。
今回の話題提供者は、二ノ宮麻巳子(スイス連邦工科大学)
発表題目:  "Cytokine Engineering with Chemical Synthesis"

インターロイキン類は、ヒト体内の免疫反応で大きな役割を担うサイトカインの一種である、比較的小さなタンパク質群です。
このセミナーでは、このタンパク質の化学合成の最前線、さらには有機合成による改変によって、次世代治療薬として期待される類縁体の合成が報告されました。11人が参加し、セミナーと質疑応答を楽しみました。

有機化学分野

2022-6-20
専門基礎研究塾 第8回大隅塾談話会を開催

2022年6月14日に、専門基礎研究塾 細胞科学分野では、以下の談話会を開催致しました。

第8回大隅塾談話会

話題提供:久堀 徹 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 教授
話題:  "私の研究人生に影響を与えた人たち"

今回、久堀徹先生に、「私の研究人生に影響を与えた人たち(図1)」というタイトルでお話しいただきました。一人目は、学生であった久堀先生を光合成研究の道へと誘った恩師、櫻井英博先生。櫻井先生のもとで、OPアンプ作製や分光測定などの技術をしっかり身につけることができたそうです。博士課程を卒業する間際の3ヶ月間は、ATP合成酵素研究のメッカであった自治医科大学第一生化学教室で武者修行を行い、そこで平田肇先生や吉田賢右先生と出会われました。また、大学院在学中、葉緑体ATP合成酵素の研究成果を単著論文として定期的に報告されていた高木みづほ先生とも交流し、同業者として刺激を受けるとともに、早稲田を離れるにあたっては「自分自身で考えるのが一番楽しいのよ」と激励されたそうです。そうした励ましもあって久堀先生は出身研究室を出て、横浜市立大学の真鍋勝司先生の研究室の助手に採用されました。真鍋先生からは「自分自身の生化学の研究をここで確立しなさい」と言われ、真鍋研究室のテーマであったフィトクロムを対象として得意の分光測定による研究を行うと同時に、新しい試みとしてアフィニティークロマトグラフィーを用いたフィトクロムと相互作用するタンパク質の探索を行いました。この頃、葉緑体ATP合成酵素研究のリーダーの一人であるHeinrich Strotmann先生(ドイツ・デュッセルドルフ大学)の下で3ヶ月間研究を行いました。Strotmann先生は気さくな人柄であると同時に、東欧やイスラエルの支援にも積極的で、真のhospitalityを教えられたそうです。その後、久堀先生は本学資源化学研究所の助教授となり、吉田賢右先生とともに吉田・久堀研を14年間率いました。ATP合成酵素が回転分子モーターであることを証明した有名な実験が行われたのもこの頃です。吉田・久堀研では国内外の研究者を多く招いて交流を深め、その中には海外のノーベル賞受賞者やオートファジー研究を花開かせていた大隅先生も含まれていたとのことでした。そうした刺激的な研究環境の中で、久堀先生は呼吸鎖と光合成に関わるそれぞれのATP合成酵素の違いを深く考察し、鍵はレドックス制御にあると睨み、現在の仕事に繋がる研究をスタートしました。中でも、横浜市大で習得したアフィニティクロマトグラフィーの技術を応用した「チオレドキシンアフィニティークロマトグラフィー」は、この分野の第一人者の一人であるUC バークレーのBob B. Buchanan先生からも高く評価され、研究に弾みがついたそうです。最後に、「研究を生み出すのは個の力、発展させるのは和の力。逆も真なり。出会いを大切にしよう!」と久堀先生は結ばれました。
これまでの談話会では、演者の先生の一人称の研究史を聞いてきました。今回、新たな趣向として「久堀先生に影響を与えた人たち」の話をお聞きしました。その人たちの話をつなぎ合わせると、若い時に培った技術や得た仲間を大切にし、のちの人生で大きく活用することによって研究を発展させてきた研究者 久堀徹の姿が浮かび上がってきました。人間力を感じずにはいられませんでした。


図1 今回の談話会で紹介していただいた先生方

2022-5-28
専門基礎研究塾 有機化学分野 第11回Interactive Seminar

2022年5月28日、第11回Interactive Seminarが行われました。
今回の話題提供者は、臼杵豊展 教授(上智大学)
発表題目:  "Recent research on elastin crosslinkers"

本セミナーでは、弾性線維エラスチンの架橋ペプチドであるデスモシンおよびアイソデスモシンの合成と性質に関するものでした。すなわち、生合成を模倣したChichibabinピリジニウム合成によるデスモシン類の全合成と、エラスチンを含む生体試料中のデスモシンの同位体希釈LC-MS/MS定量分析、さらにクロスカップリングを基軸とした環状デスモシンペプチドの合成が紹介されました。10人が参加し、セミナーと質疑応答を楽しみました。

有機化学分野

2022-5-16
「基礎研究機構若手研究者による挑戦的研究のご紹介」実施報告

2022年5月11日付の「お知らせ」でもお伝えしましたが、すずかけサイエンスデイ2022において「基礎研究機構若手研究者による挑戦的研究のご紹介」のイベントを5月15日に開催しました。すずかけサイエンスデイでの基礎研究機構関連のイベントは、今年が最初になります。コロナ禍が続いているため、対面参加とオンラインを併用した開催となりました。開催前は参加者が少ないのではと心配していましたが、講義室に24人、オンラインで46人の参加者がありました。
まず、機構長の大竹尚登教授より基礎研究機構の説明があり、続いて4人の塾生(佐藤優子氏,三木卓幸氏,當麻真奈氏,白根篤史氏)による講演会を行いました。講演題目は、5月11日付の「お知らせ」で紹介しましたので省略しますが、いずれも聞き応えのある講演内容で質疑も活発に行われました。一人当たりの講演時間をもう少し長く取った方がよかったと思いましたが、東工大の若手研究者による挑戦的研究の醍醐味を参加者に感じていただいたと思います。今回のイベントの実施を支援していただいた方々に感謝の意を表します。

2022-5-11
細胞科学分野の西原秀典助教らの研究内容が、東工大ニュースに掲載

専門基礎研究塾 細胞科学分野の西原秀典助教らの研究内容が、東工大ニュースに掲載されました。

東工大ニュース:ニホンオオカミの起源を解明

20世紀初頭に絶滅したニホンオオカミの進化的起源はこれまでほとんど不明でした。特に更新世の日本列島には巨大なオオカミが生息していたことが化石記録から知られており、小型であるニホンオオカミとの遺伝的な繋がりの有無について諸説ありました。今回、5000年前のニホンオオカミの遺骸、および35000年前の巨大なオオカミの化石から古代DNA解析をおこないました。その結果、巨大なオオカミは古くに分岐した更新世オオカミ系統の一つであったこと、またニホンオオカミはその巨大なオオカミ系統と後から日本列島に入ってきた別のオオカミ系統との交雑により成立したことが明らかになりました。
本研究成果は、米国時間の5月9日付で米国科学誌「Current Biology」に掲載されました。

詳細は、東工大ニュース:ニホンオオカミの起源を解明をご覧ください。

2022-5-9
量子コンピューティング分野新規入塾

2022年5月9日に基礎研究機構 専門基礎研究塾 量子コンピューティング分野の入塾式を開催しました。 大竹尚登基礎研究機構長から基礎研究機構についての説明があり、西森秀稔塾長から塾生への激励と入塾証の授与が行われました。


左から大竹尚登機構長、木村裕介研究員、西森秀稔塾長
(注意喚起をしたうえでマスクを外して撮影しています)

2022-4-27
「基礎研究機構若手研究者による挑戦的研究のご紹介」5/15開催

「すずかけサイエンスデイ2022」2022年5月14日(土)・15日(日)において、基礎研究機構の塾生4名が,今取り組んでいる挑戦的研究の内容と将来展望をわかりやすく説明します。

「基礎研究機構若手研究者による挑戦的研究のご紹介」
イベント日時:5月15日(日)10時~11時30分
会場:すずかけ台キャンパスJ221講義室、またはオンライン

※なお、当日の会場、またはZoom情報の詳細は、お申し込み後、SSD実行委員会からメールにてご連絡差し上げますのでご確認ください。

概要:
基礎研究機構は,未来のアカデミアを支える基礎研究者を育成する場として,2019年6月に設置されました。本機構は,3つの専門基礎研究塾と,広域基礎研究塾から構成されています。専門基礎研究塾は,各専門分野の世界的研究者が塾長となって長期間塾生を鍛えるもので,現在細胞科学分野の大隅塾に18名,量子コンピューティング分野の西森塾に1名,有機化学分野の鈴木塾に4名の塾生が在籍しています。また,広域基礎研究塾では,全ての分野の若手研究者を対象として3か月間程度研究テーマを落ち着いて考える機会を設けており,これまでに65名の助教が入塾しています。この講演会では,基礎研究機構の塾生4名が,今取り組んでいる挑戦的研究の内容と将来展望をわかりやすく説明します。

講演プログラム:
司会:伊能 教夫 (基礎研究機構 副機構長)
10:00~:大竹 尚登(基礎研究機構 機構長)
「基礎研究機構のご紹介」
10:05~:佐藤 優子(細胞制御工学研究センター, 専門基礎研究塾所属) 
「生細胞イメージングで探るエピジェネティクスのしくみ」
10:25~:三木 卓幸 (生命理工学院生命理工学系, 広域基礎研究塾 第1期生)
「細胞内で人工構造を建造」
10:45~:當麻 真奈 (工学院電気電子系, 広域基礎研究塾 第3期生)
「モバイルバイオセンサーで目指す未来のヘルスケア」
11:05~:白根 篤史 (科学技術創成研究院 電気電子系, 広域基礎研究塾 第3期生)
「宇宙とつながる無線通信集積回路」
11:25~:伊能 教夫 (基礎研究機構 副機構長)
総括

すずかけサイエンスデイ(SSD):イベントページ

2022-4-23
専門基礎研究塾 有機化学分野 第10回Interactive Seminar

2022年4月23日、第10回Interactive Seminarが行われました。
今回の話題提供者は、吉沢道人 教授(東京工業大学)
発表題目:  "What are aromatic micelles?"

ミセルはアルキル鎖とイオン性官能基を持つ「ひも状両親媒性分子」からなる分子集合体です。一方、芳香環パネルを含む両親媒性分子はミセルを形成せず、カラム構造(積層構造)の集合体を形成します。
本セミナーでは、吉沢博士らが開発した新しいタイプのミセル『芳香環ミセル』が紹介されました。すなわち、新規に合成した2つの芳香環パネルを有する「湾曲型両親媒性分子」により、水中でサイズ制御されたミセルの作製につながったこと、さらに、この芳香環ミセルの分子内包能などの様々な機能が紹介されました。15人が参加し、セミナーと質疑応答を楽しみました。

有機化学分野

2022-4-7
量子コンピューティング分野新規入塾

2022年4月1日に基礎研究機構 専門基礎研究塾 量子コンピューティング分野の入塾式を開催しました。 大竹尚登基礎研究機構長から基礎研究機構についての説明があり、西森秀稔塾長から塾生への激励と入塾証の授与が行われました。


左から西森秀稔塾長、荒井俊太助教、大竹尚登機構長 (注意喚起をしたうえでマスクを外して撮影しています)

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