Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2019.02.12

プレスリリース

核分裂生成物の二つの転移機構を同時に説明可能な理論構築

原子力廃棄物処分、超重元素合成や宇宙の元素起源解明に寄与

東京工業大学 科学技術創成研究院 先導原子力研究所の千葉敏教授らは核分裂生成物の質量数分布と運動エネルギーの両方における「系統性」と「特異性」を同時に説明することに世界で初めて成功した。

原子核が二つに分裂する核分裂過程では1,000種類を超える様々な核種が核分裂生成物として生成されるが、その多くが放射性原子核である。そのため適切な廃棄物処分や原子力の安全性向上のためには核分裂反応機構を解明し、核分裂生成物の質量数分布や運動エネルギーの予測を高精度に行う必要がある。

実験的には核分裂生成物の質量数分布及び運動エネルギーには有意な系統的性質と、それからずれる特異性という二つの側面があることが知られているが、これまではその両方を同時に説明できる理論は存在していなかった。

千葉教授のグループは非平衡統計力学の手法であるランジュバン方程式を核分裂過程に適用し、核分裂生成物がほぼ同じ質量数の原子核に分裂する成分の寄与の大小と運動エネルギーの相転移的な変化の間にある相関を調べることにより核分裂における長年の謎を明らかにした。これを実現するために分裂途中の原子核の形状を表す手法と様々な形状におけるエネルギーと輸送係数の計算手法を工夫、かつ高速の計算アルゴリズムを採用し実装した。この成果により、使用済み核燃料の適切な処理処分、廃棄物減容、有害度低減や原子炉の安全性を高めるための基礎データ構築への道が拓けた。

研究成果は英国時間2月6日10時にSpringer-Nature(シュプリンガー・ネイチャー)社の科学専門誌『Scientific Reports(サイエンティフィックリポーツ)』に掲載された。