2024.09.18
核融合炉液体金属ブランケットの電磁ブレーキ効果の抑制へ
保護性α-Al2O3膜が異常酸化現象を克服
東京工業大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所の近藤正聡准教授と工学院 機械系の武藤龍平大学院生、北海道大学電子科学研究所/創成研究機構の遠堂敬史特任助教、核融合科学研究所研究部超高流束協奏材料ユニットの田中照也准教授らの研究チームは、FeCrAl合金が保護性α-Al2O3膜を形成する際に引き起こす異常酸化現象の原因を特定し、その改善策を見出した。
FeCrAl合金は、使用前に酸化処理を施して材料表面を緻密で保護性に優れたα-Al2O3膜で覆うことにより、過酷環境下における耐食性を劇的に改善する機能を有する材料である。しかし、特定の条件において、表面に多孔質な酸化物(異常酸化物)が局所的に成長し、均一な膜の形成が阻害されることがあった。そこで近藤准教授らは、この異常酸化物について透過型電子顕微鏡などを駆使して分析した結果、FeCrAl合金のワイヤー放電加工面に形成されるマイクロクラック内に残存するワイヤー成分が原因であることを突き止めた。さらに、高温で酸化処理を施して異常酸化物の直下に緻密なAlリッチ膜を成長させることにより異常酸化現象を克服可能であることを示した。
また、磁場閉じ込め核融合炉の液体LiPbブランケットでは、液体金属が高磁場下を横切るように流れる際に誘導電流が発生し、それにより液体金属を流すためのポンプに大きな負荷を与えるMHD圧力損失(電磁ブレーキ効果)を生じてしまう。本研究では、核融合炉液体ブランケット体系を想定した数値シミュレーションを実施した結果、α-Al2O3膜が部分的に異常酸化物を巻き込んだとしても、液体金属に生じるMHD圧力損失(電磁ブレーキ)の効果を大きく抑制する性能があることが分かった。
本研究成果は、Elsevierの「Surface and Coatings Technology」オンライン版に8月19日に掲載された。