Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2022.11.18

プレスリリース

静電アクチュエーターの出力を1,000倍にできる有機強誘電材料を開発

低電圧で大出力が得られるアクチュエーターの実現に

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の西村涼特任教授と市林拓特任准教授らの研究チームは、ENEOS株式会社と共同で、静電アクチュエーターの出力を従来比1,000倍にできる有機強誘電材料を開発した。

静電アクチュエーターは、構造が簡単で軽量という特長があるが、大きな出力を得るには10 kV程度の高電圧が必要になるなど制約が多く、応用が限られていた。研究チームは、室温でも強誘電ネマチック相を持つ液晶材料による、新たな有機強誘電材料を開発した。これを媒体とした静電アクチュエーターでは、従来に比べて出力が1,000倍になり、駆動電圧が数10 Vまで低減した。また、強誘電材料特有の自発分極により、出力が印加電圧にほぼ比例するため、印加電圧の2乗に比例する従来の静電アクチュエーターと比べて、デバイス制御性の改善が期待できる。

高電圧が必要な従来の静電アクチュエーターは、感電の危険性から人体に装着するような用途への適用は困難だった。今回開発した有機強誘電材料を媒体に用いれば、駆動電圧が大幅に低減するため、ヒトの立位姿勢の維持や歩行補助、重量物を持ち上げる際の負荷軽減等に使用されるソフトアクチュエーターへの応用が期待される。これらは、高齢化社会における自立支援や労働人口の減少に伴う肉体労働の負荷軽減といった、来るべき日本の社会課題の解決の一助となる技術である。また、レアメタルを必要としないアクチュエーターとして、モーター等への応用も期待される。

本研究成果は、東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の西村涼特任教授、渡辺順次特任教授、市林拓特任准教授、陳君怡特任助教、ENEOS株式会社機能材カンパニーの増山聡研究員、清水源一郎研究員によって行われ、11月11日付の「Advanced Physics Research」にオンライン掲載された。