Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2021.03.12

プレスリリース

壊れたDNAを安全に修復するための第一歩を解明

ペプチドを利用しDNA修復系を意のままに操る可能性

東京工業大学 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センターのAleksandar Zdravković(アレクサンダー・ゾドラヴコヴィチ)研究員、坪内英生助教、岩崎博史教授のグループはテキサス大学ヘルスサイエンスセンターのPatrick Sung(パトリック・サン)教授のグループと共同で、切断されたDNA鎖が正確に修復されるように誘導するための分子機構を明らかにした。

DNA鎖が切断された場合、失われた遺伝情報を正確に復元するためには相同組換えが必須である。その際、切断されたDNA末端の二本鎖のうちの一方を削り込むことで、一本鎖DNAを末端に露出させ、そこに相同組換えタンパク質を結合させる必要がある。この一本鎖DNAの形成に重要な役割を果たすのがMre11-Rad50-Nbs1(MRN)よりなるDNAヌクレアーゼだが、この複合体が機能するにはCtp1という制御タンパクにより活性化される必要がある。

研究グループは試験管内の再構成によりCtp1のリン酸化がMRNとCtp1の会合を促すこと、活性化にはCtp1のC末端が必須であることを明らかにした。しかもこの活性化にはCtp1末端を構成するたった15アミノ酸からなるペプチドで十分であった。この知見を応用することで、ペプチドを介して相同組換えの活性化や阻害を細胞レベルで制御できる可能性がある。

研究成果は3月8日付(現地時間)の「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)」電子版に掲載された。