遷移金属ダイカルコゲナイドで一般原理を発見
―トポロジカル電子状態の設計・制御に新たな道―

理化学研究所 創発物性科学研究センター 創発計算物理研究ユニットのバハラミー・モハマド・サイード ユニットリーダー(東京大学 大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センター 特任講師)、東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の笹川崇男准教授、英国セント・アンドルーズ大学のフィリップ・キング准教授らの国際共同研究グループ※は、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)において、物質表面にスピンの向きがそろったトポロジカルな電子状態や、物質内部全体にグラフェンと同様な質量ゼロのディラック電子状態が発現する際の一般的な原理を発見しました。

電子状態を決める波動関数にトポロジー(位相幾何学)を当てはめることで、「トポロジカル絶縁体」などが理論的に提唱され、実験による検証が進んできました。一方、これまでは個々の物質について、構成するさまざまな元素間や電子軌道間における運動量とエネルギーの関係を解析することで、トポロジカルな電子状態が出現する原因が理解されていました。しかし、戦略的にトポロジカル物質を創製するための一般化された方法論や明確な指針はありませんでした。

今回、国際共同研究グループは、経験や実験データを必要としない第一原理計算で求めたTMDの電子状態をもとに一般原理を理論的に構築し、スピン状態までの詳しい電子構造を直接観察できる角度分解光電子分光法によって実験的な検証を行いました。その結果、六つの異なる組成をもつTMDについて、トポロジカル表面電子状態や3次元ディラック電子状態が存在していることを実証しました。これは提唱した一般原理による理論予測が正しいことを示しています。

本成果は、2016年のノーベル物理学賞で活気づいているトポロジカル電子物質の研究分野に普遍的な基礎学理を与えるとともに、トポロジカル電子状態の制御や物質設計への重要で新たな指針になると期待できます。

本研究は、国際科学雑誌『Nature Materials』(11月27日付:日本時間11月28日)に掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)「トポロジカル絶縁体ヘテロ接合による量子技術の基盤創成(研究代表:川﨑雅司)」および「トポロジカル量子計算の基盤技術構築(研究代表:笹川崇男)」の一環として行われました。

詳しくはicon_site東工大ニュースをご覧ください。

フロンティア材料研究所
笹川研究室